Cage(Chika↓all)

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初めての恋愛で、何をどうすればいいのかなんてわからなかった。 私ばかりがこんなこと考えているみたいで悔しかった。 もういいって思ったり、やっぱり会いたいって思ったり。 気持ちも一定になってくれない。 隆太とつきあって2週間で私はハマりすぎた。 3週間目、何も言わないで待ち合わせ場所にもこなかったくせに、その月曜は隆太は普通にきた。 きたから拗ねてしまった。 来なかったら…泣いてる。 「ここでじっとしてるのもなんだし、どっかいこ」 謝ることもなく言ってくれちゃう。 私は待っていたのに。 …隆太の気持ちなんて最初からないと思ったほうがいいのかもしれない。 彼女だなんて思わないほうがいいのかもしれない。 何度もそればかり思ってしまうのに、好きだから諦めきれない。 信じたい気持ち。 それでも拗ねてしまって、隆太の顔も見れないし、声も出せない。 もっとかわいくできればいいのに、私、かわいくもない。 「…映画でも見に行く?」 なんて声をかけられても何も言えなくて。 隆太はその場にしゃがんで、下から私の顔を覗き込んできた。 私は顔を上に向けて逸らしてやる。 耳にはライターの音。 煙草でも吸うらしい。 なんて思っていたら。 「……ん」 隆太の手が私の唇にふれる。 指は火のついた煙草を挟んでいて、私はそれを吸う。 一息吸うと指は離れて、私は煙を吐く。 隆太の手はもう一度、私の唇にふれて、私は視線を隆太へ向ける。 「……遊ぼ?千香」 なんて言うから、私は頷いてしまっていた。 拗ねて、軽くふれられただけでなだめられてしまう馬鹿な私。 甘えたくて、その腕のブレザーにふれる。 腕にふれたいのに、服にしかふれられない。 …嫌われてもいいと思ったり、嫌われたくないと思ったり。 私はなんて忙しい人間なのだろう。 隆太は少しは慣れたのか、私の手をそのままに煙草に口をつける。 間接キス。 隆太のその煙草を持つ指と唇をじっと見ていた。 …唇、ふれたい。 自分の唇にふれてみると、少しかさついてしまっているようにも思えて。 もう少し女の子らしくなりたい…なんて思う。 唇のケアなんてしたこともない。 メイクなんてしたこともない。 私はがさつなのかもしれない。 …ちょっとだけ、隆太に惚れてもらえるようにがんばりたくなった。
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