Cage(Chika↓all)

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隆太の目はじっと私を見上げてくれて、私は視線を逸らす。 「…許さなくていい」 「……別れたいって意味?」 「違う。殴っていい。別れたくない」 「殴る理由なんてないよ?」 「……嫉妬して。俺を束縛して。俺はおまえのものだと言って」 隆太は…私のものなんかじゃない。 言えなくて。 私はブランコの鎖から手を離すと、隆太に正面から抱きついてみた。 「……ごめん。千香。俺は……千香のもの」 隆太の手のひらが私の背中に優しくふれる。 そんなふうに縛らなくていいよって言ったら、たぶん何か言われるだろうから言わないでおいた。 私は私の心がここにあるだけ。 隆太しか見れないだけ。 ぎゅうって強く抱きつく。 私の肩に隆太の顔が当たって、隆太が少し苦しそうに息を吐くと、私の首筋にかかる。 それだけでドキドキさせられる。 「……千香、ちょっと…」 「苦しい?」 「…息、うまく…できない」 私は笑って隆太に抱きつきながらブランコから降りて、隆太を離してあげた。 その顔を見ると、片手を口許に当てて、私から顔を逸らしている。 「…目、逸らしたらまた抱きついちゃうよ?」 「……ダメ」 「抱きついちゃう」 「ダメっ」 隆太は私から逃げるように距離をとろうとして、私は隆太の腰に腕を回して。 隆太の手が焦ったように私の腕にふれる。 「なんでダメなの?原田さんにたまに抱きつかれてるくせに」 「……恥ずかしいから」 まだ恥ずかしいらしい。 嘘だと疑う。 原田さんは平気で、私には恥ずかしいって意味わからない。 女の子に抱きつかれるの全部恥ずかしいって言ってくれるならわかってあげるけど。 理由を認めてあげなくて、私はそのまま隆太の体にぴったり寄り添って、その顔を見上げる。 隆太は片手を口許に当てたまま、私を少し困ったように見る。 わざと胸を隆太の胸に押し当てて、隆太の体を引き寄せるように、腰に回した腕にぎゅって力を入れて、じーっと隆太の顔を見る。 「……のぼせて鼻血出そう」 「えっち」 「千香がしてるんだろっ」 だって私はくっついていたい。 隆太にぴったりくっついていたい。 隆太の肩に軽く頭を寄せて目を閉じる。
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