584人が本棚に入れています
本棚に追加
/606ページ
隆太のにおい、隆太の体温。
それを感じるとドキドキして、うれしくて、どこか落ち着いて。
ぎゅって強く抱きしめられたいから、私は強く抱きつくのだろう。
だけど、隆太の手は私の背中に軽くふれるだけ。
私は私を押しつけてしまっている?
私の気持ちを押しつけてしまっている?
どれだけ好きでいていいのかわからない。
どれだけそばにいていいのかわからない。
隆太から私にふれようとはしない。
雨の日は自転車の後ろに乗れない。
並んで歩いて、目的地のゲームセンターに辿り着くと、隆太は隆太の好きなゲームをしている。
私はおとなしく見ていたり、別のゲームをしていたり。
ふれることはない。
隆太が冷やかされるのを嫌がるから、近くにもあまりいかない。
ここは学校から近くて、同じ学校の子も遊びにくる。
一人でクレーンゲームをして、ワンコインでお目当てのぬいぐるみを取れて、ちょっとうれしくて隆太に自慢しようと探してみると、隆太は原田さんといた。
距離があるし、まわりの音もあるし、会話は聞こえないけど。
隆太は原田さんに飲み物を買って渡して、原田さんはすごくうれしそうな顔を見せる。
そのまま隆太の腕をひいて、ベンチに座って、隆太は原田さんにつきあうように原田さんの隣に座る。
邪魔をしないほうがいいのかなと思って、私は一人、別の階にいって、ベンチに座って、ぬいぐるみとデートをする。
彼女…なんだし、なんて思っても、声をかけられなかった。
私の隆太…なんて、とても言えなくて。
隆太の友達の前では隆太に声をかけちゃいけないみたいだし…。
嫉妬、しないわけじゃないけど。
自分がどうすればいいのかわからない。
私のしたいこと、してしまいたいこと、すべて隆太の迷惑になりそうで何もできない。
何が正しいのかわからない。
ぐだぐだといろんなこと考えていた。
戻っていいのかわからなくて、このまま帰ったほうがいいような気もして。
隆太が探して見つけてくれないならと、1時間過ぎて、私はゲームセンターを出る。
傘を広げて、空を見て、彼女なんかじゃないほうが気楽なのか、なんて考える。
好きだけど。
他の子と仲良くするなら、私はいなくてもいいんじゃない?って思う。
好きだけど。
好きだから、悩んで考えて寂しくなる。
最初のコメントを投稿しよう!