Cage(Chika↓all)

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昨日、勝手に一人で帰ってしまったけど、学校で顔を合わせても隆太は何も言わなかった。 「おはよ」 そう挨拶しただけ。 話すこと、あるよね? 放課後じゃないと話せないわけでもないよね? 言いたいことあるのに、私も何も言えなくて。 別の男友達に挨拶をされて、会話を振られて話しながら教室まで歩く。 彼女…になれないみたい。私。 それでも放課後、いつものように公園にいった。 昨日の雨でベンチは濡れたまま。 足元もまだ濡れたまま。 ジャングルジムに登ってみた。 頂上近くに座って、隆太を待ってみる。 もうこないかも。 このまま自然消滅かも。 だって私、彼女になれている気がしない。 それなのに私から何も言わずに一人で帰って。 学校でも何も言わなくて。 夕焼けの明かりが残っている間に、隆太はきた。 公園を見回して、私を見つけてまっすぐに近寄ってくる。 黙ってじっと見ていた。 ジャングルジムの下で隆太は立ち止まると私に頭を下げる。 「昨日はごめん。どっかいくときはもう別行動しない。本当にごめんっ」 まっすぐに謝ってくれちゃうから、うれしくなってしまったりもする。 謝ってくれなかったら…どうしていたのかわからない。 だけど、きっと、なだめられるとなだめられてしまう。 私は隆太に弱い。 「私が勝手に先に帰っちゃっただけ」 「……俺が奈緒美といたからだろ?」 隆太は顔を上げて私を見上げる。 「…隆太が男友達といても先に帰っていたと思う」 「千香の時間がある限り、一緒にいたいのは俺だから。もう一人で帰らせない。千香が帰るなら、ちゃんと送っていく」 「……学校で話さないくせに」 「それは…。…ごめん。俺、こんなのだけど、一回も告白されたことないわけじゃなくて…。俺が振った女に無闇に嫉妬されたくもないだろ?」 「中学の頃、男友達ばっかりだったから、嫉妬されまくっていたよ?」 つきあった相手に惚れてる女になら、嫉妬されて当然って思ってあげられる。 私にとってそれは理不尽じゃない。 「ねぇ?どうして告白されてつきあわなかったの?原田さん、かわいいほうだと思うよ?」 「…顔関係ない」 「じゃあ、どうして私に彼女になってなんて言ったの?私、隆太と友達でもなかったよね?」 「……ごめん。また嘘ついたかも。…千香、かわいいし、もっと一緒にいたかった。俺の千香になって欲しかった」
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