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つきあおうって話になったときにも、隆太は同じことを言っていたと思う。
「私、かわいくない。隆太みたいにモテないよ?」
「俺にはじゅうぶんにモテているように思う。…他人の評価なんてどうでもいい。俺がかわいいって思えればそれで…。
なぁ、千香。パンツ見えそうだから降りてくる気ないか?」
言われて、慌ててスカートを押さえた。
自分の足を見て、ちらっと私のほうを見る隆太の視線を見る。
イタズラしたくもなって、スカートをぴらっと軽く上げると、隆太は慌てたように私から顔を逸らす。
「むっつりすけべ」
「千香が見せてるんだろっ」
「…見えた?何色?」
「……なんか大人っぽい水色」
しっかり見ていやがる。
「えっち」
「……どうせ、むっつりだよっ。おまえの前だと、なんか全部、俺、形無しだっ」
隆太はどこか怒って、私に背を向ける。
「形無しってどういう意味?」
「俺が俺っぽくいられないっていうか、何もかっこつかない。なんか謝ってばかりになるし、自分がひどく情けない」
それって、私といても楽しくないって聞こえる。
そんなのいやだって聞こえる。
スカートの裾を握って、握ったその手を見ていた。
ふれてはいけないし、からかうようなこともしてはいけないらしい。
何をすればいいのかわからない。
つきあう意味もわからない。
一生懸命になるほど空回る感じ。
「…千香?」
何も言えないでいると、隆太は私を振り返る。
私はジャングルジムの上で立ち上がって、隆太に顔を見られないように更に上に登る。
「……パンツ見えてる」
「えっち」
「……他のやつに見られたくないから、降りてきて」
「私は隆太のもの」
どんなに寂しくなっても、気持ちは消えない。
消えない気持ちは更に寂しさをくれる。
私も形無しかも。
空回ってしまう。
気持ちだけ膨らんで、吐き出せなくなる。
「千香。降りてこい」
ちらっと隆太を振り返ると、ちょっと怒っているように見えて、私は渋々、ジャングルジムを降りる。
一段、二段降りると、私の体に隆太の腕が回ってきて、私を抱き上げて地面に降ろす。
細く…見えるけど、力強い腕。
私を軽々と抱き上げちゃった。
隆太の腕は私を地面に降ろしても、私の体を抱きしめていて。
私の耳元に隆太の唇が近づく。
「ごめんな、千香。…学校でも話そう?…いっぱい…いちゃつこう?」
私の我が儘みたい。
隆太に妥協させているみたいで…いや。
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