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私は我が儘なのかもしれない。
私が望んだことを隆太はわかってくれて、叶えようとしてくれているのに。
……隆太が望んでもいないなら、いらない…なんて。
そんなふうに自分の気持ちをころころ変えるなんて…。
ただ、からかってしまっているようにも思う。
大好きと心の中で言っても届くはずもない。
「おはよ」
朝、学校にいくと隆太と会って、そう声をかけられた。
「おはよ」
挨拶を返すと、私は別の男友達にも挨拶をされて。
「千香、次の日曜、スタジオな。前に千香に売ったチケットのライブで千香に叩いてもらうことにしたから」
「ちょっと、誰もそんなの了承してないってばっ」
「だって千香、他のやつより叩けるし」
逃げるように歩いていくから私はその男友達を追いかけて、隆太とは挨拶だけ。
同じ教室にいても、私と隆太の友達は違う。
近づくこともない。
きっかけもない。
昼休み、また男友達が二人でやってきて絡んできて、更にきっかけなんてない。
隆太の姿を探すように教室の中を見ると、隆太はいつものように紫苑たちと話していた。
どこかに行こうと廊下に出ようとして、すぐ近くを通る。
目は追うのに声をかけられなくて。
手をのばせば届くのに、その腕を捕まえられない。
ぼやぼやしていたら、女の子たちが隆太たちに声をかけていって。
原田さんじゃない、他の女にも腕を握られている隆太を見せつけられる。
私は溜め息をつきたい気持ちで隆太から視線を逸らす。
話せない。
隆太が話そうって言ってくれても、そのきっかけがわからない。
諦めていたことでもあるし、もういいって思っていたことでもあるけど、隆太が言ってくれたのに…なんて、どこか責任転嫁してしまう。
できないなら…しなくていい。
できないのに、言ってくれなくていい。
…違う。
私も…声をかけられないだけ。
それでも放課後は会える。
そう思っていた。
教室から出ようとすると、女の子たちが隆太たちを遊びに誘う声。
振り返って隆太を見ると、隆太の視線も私を見る。
私が教室を出るより先に隆太たちは楽しそうに教室を出ていった。
友達にもなれない距離がある。
スギに先に帰っていてと言ったあと、私は一人で教室にいた。
どうせ公園にいっても隆太はいない。
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