Chain

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私が言ったからかはわからないけど、隆太は予備校に行くことを決めたらしい。 隆太には例え親に与えられたものだとしても、目指すべきものがある。 私には…。 校内の掲示板に貼られた、奨学金で大学へ行く要項の書かれた紙を眺めていた。 奨学生なんて、もっと頭のいい人ばかりなのかと思えば、評定平均3あればいけるらしい。 つまり普通くらいの学力があれば、学校からの推薦は受けられる。 受かるかどうかはわからないけど。 奨学生で勉強したあとのほうが大変そうにも思う。 進学にはお金がかかる。 その学費を学校に払ってもらったあとは、もちろん返していかなければならない。 労働奉仕が一般的のように思う。 「千香は進学したいのか?」 掲示板を眺めていたことがバレていて、放課後、隆太に会うと聞かれた。 「…現実問題、進学したいって言ってもできない。お金ないし、頭もそこまでよくないし。隆太はお金出してくれる人がいるし、頭もいいんだから、行かせてくれるなら行けばいいんじゃない?」 私は隆太の隣を歩きながら、詳しくは言えないけど、隠さずに答えてあげる。 「千香が大学行きたいなら俺のかわりに目指してくれればいいのに。俺が働いて援助する」 「なんか違う。それ。あ…、でも、どうしても大学へ行きたかったら、働いてお金貯めてから行けばいいかなと思った」 「そういうのもアリだよな。…俺が言いたいのは、俺のペースで生きたいってこと……なのかも」 「自分のことなのに曖昧」 「自分のことほど曖昧になる。他人のことはわかっても、自分のことのほうがわからなくなったりする」 「自分をもっと見つめてみる?」 「それ、ちょっと気持ち悪い」 隆太は笑いながら言って、通りかかったバリケードの張られた階段を見る。 何かするかなと思っていたら、私に鞄を渡してきて、そのバリケードを乗り越えて不法侵入。 といっても地下に続く階段。 封鎖された駅へ続く道か何かだろう。 私もいってみたい。 不法侵入だけど。 ちょっとくらい中を見てみたい。 でもバリケード、けっこう高くて、登らないと中は見えない。 「何かある?」 「シャッター閉まってるだけ。あとは別に鼠もゴキブリもいない。枯葉がちょっとあるくらい」 「なんだ。つまんないの」 「千香も来てみる?」 「行きたいっ」 「鞄、投げ込んで」 私は私の鞄と隆太の鞄を投げ込んで、バリケードに登る。 何気に私は活発なほうかもしれない。
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