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たとえばこれも鳥籠で、私がそこに帰っているだけだと言われたのなら、そういう考え方もできるよねとは言ってあげられる。
だって相手は親だし。
私は餌をもらっている雛だ。
餌がなければ生きてはいけないし、寝場所も欲しい。
普通はそれが当然のように与えられている。
翌朝、顔が腫れていて、とても学校にいけなかった。
母は何も言わずに仕事へ出る。
隆太からメールが届く。
私を心配してくれている。
その気持ちをすごくうれしく思うのに、その甘いものに逃げてしまいたいのに、現実は酷だ。
私は隆太に似合う女なんかじゃない。
隆太なら、私以上に似合う相手をいくらでも見つけられるだろう。
私は愛され方を知らない。
私は愛し方を知らない。
夕方には腫れもひいて、いつもの隆太との待ち合わせの公園へ。
隆太の自転車を入口に見つけて、待ち合わせてもいないのに来てくれるんだなと思う。
メールの返信もしていないのに。
公園の中に入ると、隆太は原田さんじゃないまた別の子といた。
遠目から洩れ聞こえてくる会話は、どうやら隆太は後をつけられて、ここを知られてしまったらしい。
隆太はなんだか邪険に扱っているけど、相手の子はまたかわいい子だ。
私は隆太と彼女が座るベンチに歩み寄る。
「千香っ」
私の顔を見ると、隆太はどこかうれしそうな顔を見せてくれて、立ち上がって、さっさとこの場を離れようとしているのか、私の手を掴んで歩き出そうとした。
「隆太っ、逃げんなっ」
「だったら俺を追うな。俺は千香とつきあってる。おまえにかまってる余裕なんかない」
なんて目の前で喧嘩を始めてくれる。
この男、モテモテだなと思う。
友達でいれば、たまにひどいこと言ってくれるけど気のいい人。
邪魔さえしなければ、ひどいことばかり言われたりしないだろう。
「ごめん。…殴っていいよ?」
私はひたすら隆太が引き留められるのを止めるように言葉を挟んだ。
「なに?その余裕っ。隆太とつきあえているからっていい気にならないでよっ」
余計に怒らせてしまった。
口喧嘩はあまりしたくない。
聞きたくもないから。
「あなたはどうあれば納得するの?隆太の気持ちもないのにつきあいたい?隆太の気持ちが欲しいなら、喧嘩していても意味ないんじゃない?」
「はぁ?死ねば?」
答えにもならない煽り文句に呆れる。
まともに話し合う気もない人に何を言っても無駄だ。
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