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優しいから甘えたくなって、いい気になって振り払われそうで。
隆太の目指すべきものを見て、それの邪魔をしてしまいそうで。
そこは隆太が自分で望んでいるわけじゃないから、隆太は予備校行かなくても学校に行かなくても別に構わないって態度を見せるだろうけど。
隆太が親に与えてもらえているそれは、私にはどんなに望んでも与えてもらえないもの。
私がそれを隆太に拒ませたくない。
隆太に頭を引き寄せられて、その肩に寄りかかる。
隆太の大きな手は私の頭を優しく撫でてくれる。
ここに居場所を感じている。
ずっとここにいたいと思う。
決して冷めたわけでもないけれど、このままではいられない。
思うのに、言葉を口にする勇気もなかなか出ないものだ。
「殴ればいいなんてもう言うなよ?千香はなにもしていない。……いや、わかってる。俺がつきあう気はなくて、別に嫌いというわけでもないから、友達でと言ったのが悪いってわかってる。でも、そこにおまえが殴られる理由はない」
私はうんと頷いてみせる。
理不尽に殴られるのはいや。
だけど、ここでこんな気持ちに満たされて幸せなんて思ってしまって。
妬まれるのは当然と思う。
妬む気持ちのやり場のないものを殴ることで発散できるなら、それでいいんじゃない?なんて思ったりもする。
「ねぇ?私がふれると逃げていたのに、抱き寄せられているのは気のせい?」
「……千香からされるより、自分からしたほうが恥ずかしくないって気がついた。…というか、だから、…俺の鼓動、聞こえてバレてるって思っていたけど、聞こえない?」
言われて、私は隆太の背中に腕を回しながら、その胸に頬を擦り寄せて、鼓動を聞くように耳を当てる。
ドキドキじゃない。
ものすごく早い鼓動。
その顔を見上げてみると、隆太は私から顔を逸らす。
「恥ずかしいの?」
「からかうのなしっ。恥ずかしい…けど、嫌って思ってない」
なんかかわいい。
唇にキスしようとすると、隆太の手は私の口を塞いで、私のお尻にふれて膝の上に抱き上げられた。
「…千香、俺、…すっごくかっこつかないけど…」
私の目をまっすぐ見つめて、どこか求めるような目を見せてくれる。
スカートの中に手が入ってきて私の足を撫でながら、隆太の喉が鳴る。
「えっち」
「……自分でもかなりそう思う」
「体だけ?欲しいの?」
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