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きっと私は言うタイミングを間違えすぎた。
そういうつもりじゃなかったのに、隆太はどこか意地を見せて私の言葉はどこか流された。
それでも私はそれを一つの区切りにした。
隆太と別れたことにした。
別れたことにしたって、隆太は普通にメールをくれる。
沈んだようなメールを送ってくれて、思わず返信して会いたいって言われまくって会ったら、全然沈んでいなくて。
思いきり抱きしめられて、逃げようとしてもキスされて、そのキスにくったりさせられちゃったり。
私も別に冷めたわけでもないから、隆太に強引に引っ張られると流されてしまって。
よくないと思って、男友達とつきあってみた。
でもそこに恋愛感情はない。
手を握られるのはよくても、体にふれられるのはいや。
キスされそうになって平手打ちしちゃったり。
平手打ちしちゃっても、男友達は懲りた様子もなく、いつかはって感じに別れたいと言ってくることもなく。
隆太から離れるためだけにつきあって、隆太とより長くつきあった。
バンドに引っ張られて、その関係もあって、長く続けてしまったともいう。
隆太とつきあった春が終わり、夏がきて、秋になって。
私は就職をどうするか考えながら、学校の備品であるドラムを組み立てる。
なんだかんだいって、結局、ドラムが私の趣味となってしまっている。
もうすぐ文化祭というもので、たぶん彼氏というものの男友達に誘われるがままに、その文化祭で演奏することを強制させられて放課後練習。
彼氏…とは思ってあげるけど、不意打ちに額や頬にキスされたことはあるけど、それ以上の関係ではない。
というか、あっちはあっちで、私一筋というわけでもなく、いろんな子と遊んでいるから、それでいいんじゃないかと思っている。
2年の教室で一人で準備を終わらせて、スティックを手にして、やっとって感じに叩いてみる。
私が組み立てたから、あまり強く叩くとどこかに飛んでいくかもしれない。
サルが太鼓を叩く玩具のように、べしべしシンバル叩いてリズムをつくって遊んでいると、私の手の中からスティックは飛んでいった。
手汗で滑った。
「いてっ!」
なんて運悪く誰かに当たったようだ。
開け放たれた窓の外を見ると、中庭のベンチにいたカップルの男のほうが私のスティックを持って頭を押さえていた。
後ろ姿だけでわかる。
隆太だ。
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