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嫌われてもいい。
捨てられても構わない。
そんなつきあい方しかできないのに、山瀬はずっと私に優しい。
家から逃げるように何度も泊まらせてもらった。
なぜか山瀬の家族と仲良くなれて、朝ごはんももらえたりする。
この家の愛玩動物になりたいと思った。
山瀬が浮気中はメールの返信もない。
私はほぼ家出みたいな状態で、安いドリンクバーで朝までの時間を潰す。
真夜中に山瀬からメールの返信があった。
さよなら
少し寂しくなる。
次はどこに甘えていこうか。
中学の男友達、片っ端から挑戦してみようか。
なんて思っていたら、山瀬から着信。
『ごめんっ。千香、あのメール、嘘っ。というか俺が送ったんじゃないからっ』
なんて謝ってくれる。
山瀬が送ったんじゃないとすれば、浮気相手だろう。
かわいい人がいるじゃないか。
「大丈夫。私、彼女として何もしてない。そこにいる子とつきあったほうがいいんじゃない?」
『…別れるときは千香が俺につきあいきれないってなったとき。…俺は千香が俺を求めてくれるなら、いくらでも呼び出されてあげる』
「浮気中に邪魔してごめんね」
『……俺、今、取り戻そうと必死に千香を口説いているつもりですが』
「じゃあ、今すぐここにきて」
思いきりわがままだと思いながらぶつけてやった。
浮気中だったはずの優しい彼氏は、本当に飛んできた。
走ってきたらしく、息切れしながら店内を見回して、私の姿を見つけると、目の前の席はあいてるのに、私の隣に座って、私に寄りかかって呼吸を整える。
……馬鹿。
「汗くさい」
「走ったから。汗つけてやる」
私の顔に頭を擦りつけてきて、私は笑いながら逃げようとして。
はしゃいでしまって、人の視線を感じておとなしくする。
山瀬の首筋についた赤い部分に指を当てると、山瀬もおとなしくなって、そこを隠す。
「…気持ちいいの?セックス」
「さあ?知らない」
なんてとぼけてくれる。
まわりの視線を見て、山瀬に軽く寄りかかって、その首筋に唇を当てると、山瀬の手は私の服の裾を掴む。
その汗を舐めて離れてあげる。
山瀬の喉が鳴る。
その目が私を見る。
「…初めては童貞の人としたいかも」
「俺は…?」
「遊びまくりのくせに」
言ってあげると、山瀬はどこか落ち込んでくれて、私は少し笑って、その鼓動を手に聞くように山瀬の服の中へ滑らせる。
ドキドキしまくり。
「…千香ってずるい女」
「嫌い?」
「好き」
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