Chain

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これが最後かもしれない。 もう高校も終わってしまう。 私と隆太の接点もなくなる。 隆太が追ってくれる最後。 大好き。 心は隆太に縛られたまま。 私は隆太だけのもの。 私の家庭環境を話して、蔑まれたりしたくない。 同情してもらっても、うれしくない。 私が逃げ出したいとき、連れ出してくれても…うれしくない。 うれしいけど、うれしくない。 私は隆太が羨ましい。 私の羨むものを手放して欲しくない。 大好き。 近くにいるとドキドキするのは隆太だけ。 小さな些細なことでも、隆太がしてくれると喜んでしまう。 手を繋いでくれるだけでも。 そばにおいてくれることだけでも。 大好き。 その一言はだけど、言えない。 「学校の中でもいちゃいちゃしてくれる?」 「する。……抱きしめていい?」 隆太は聞いてくれて、私が頷くと、私の背中を抱き寄せてくれる。 私は隆太のにおいと体温に包まれて目を閉じる。 ぎゅうっとその背中を抱きしめる。 ドキドキする。 ここにいたいって心は強く思ってる。 「…俺は千香のもので、千香は俺のもの。千香を俺の鳥籠に閉じ込めて出してやらない」 隆太の手のひらは私の背中を撫でて、春より背が高くなった隆太の肩に私の頭は押しあてられる。 ずっとくっついていたい。 ずっとこの腕の中にいたい。 これが…最後。 「……ごめん。隆太とはつきあえない」 言葉にすると私の胸がひどく痛くなった。 私は嘘をつくのが苦手かもしれない。 隆太の手は私を強く抱きしめる。 苦しいくらいに強く。 最低な嘘つきの私をそのまま絞め殺してくれればいい。 涙が溢れて、隆太の肩で拭った。 「……大丈夫だよ。隆太、モテるし。私よりかわいい子、いくらでも寄ってくる」 「……それ、慰めてる?振ってるのはおまえで、振られてるのは俺だろ?」 「もっと…隆太に似合う子、いるから…」 言ったら、顎を掴まれて、顔を無理矢理あげさせられた。 隆太の顔をこわくて見れなくて、私は目を伏せる。 長い沈黙で、胸がひたすら痛くて、隆太の手を掴んで離れさせようとした。 隆太は私の手を振り払った。 そのまま何も言わずにいってしまった。 取り残された私は、その場に膝を抱えて座り込んだ。 最低な嘘つき。 ただ、大好き。 それだけ。
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