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高校は、そんな感じにいい男を二人も自分の勝手ともいえるもので振って。 隆太とその後、視線が合うこともないまま卒業式を迎えた。 学校からの斡旋で小さな会社の事務職に就職はできた。 山瀬の家という家出先もなくなって、家にはちゃんと帰っている。 帰ってはいるけど、母と口もきいていない。 たまに男を連れ込んでくれているから、私は行き場もなく、隆太と遊んだ場所をふらふらして。 たまにゲーセンあたりでナンパされたりして。 そこから友達になったりもして。 新しい家出先もできたかなというところ。 甘えるの下手だけど、甘えずに生きていくのも下手だ。 家に落ち着く場所がないから、私はどこか常に甘えられる場所を探している。 卒業式も終えて、さっさと帰ろうとしていたら、山瀬に捕まった。 「千香、ライブしよ」 なんて、バンドやめたのに言ってくれる。 しかも背後から、人目も気にしてくれなくて、ぎゅって抱きついて。 「山瀬の頬、叩いてあげようか?」 「いや。いやいやいやっ。…ちゅーしよ?」 「そういえばしたことないよね」 「…しようとしたら千香が泣いてたから…。しよ?キス」 「もう別れてる」 「俺と千香にそんなもの関係ないっ」 山瀬は私の肩を掴んで振り返らせて、私の両手を握って顔を近づけてくる。 まっすぐに私だけを見てくれるその目をただ見ていた。 薄く閉じようとする目を見て、私も目を閉じようとして。 山瀬は頭を叩かれた。 「いてっ。誰だよっ?卒業記念を邪魔するなっ」 山瀬はキスよりも叩かれたことに気をとられて、私の手を離す。 私も山瀬を叩いた中学の頃の男友達のほうを笑いながら見て、その後ろに隆太の姿を見て、思わず目で追った。 隆太の視線はこっちを見た。 何も言わずに逸らされた。 それが、私の高校生活の最後。 私の目はまだ隆太だけを追ってしまっていた。
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