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一人とだけずっと長くつきあえるのが理想なのに、私の恋愛は上手くいかない。
隆太と山瀬とはなんだかんだいっても上手くやっていたほうなのだろう。
つきあってみても、相手の言葉や態度に本気でキレて口喧嘩して、更にキレられて殴られて別れたり。
つきあったはずなのに、デートを一度もしないまま別れたり。
なんていうことを繰り返して、つきあった数ばかり増えた。
更に職場で危うく不倫になりかけて、自主退社させてもらってフリーター。
お金も貯めたいから、ひたすら面接受けまくって、なんとかテレホンオペレーターの仕事を派遣でいただいた。
なんていうことはない毎日。
だけど、何かはある毎日。
卒業して1年たって、遊びに誘われた帰り道、偶然、隆太に会った。
私は駅に向かおうとしていて、隆太は駅から出てきた。
思いきり正面から顔を見合わせて、まちがえるはずもない。
隆太が歩いていく背中を何気なく見送って、なんとなくまっすぐ帰る気持ちになれず、駅の近くのベンチに座り込んだ。
1年ぶりに隆太を好きだった気持ちを思い返した。
何を考えるものでもないのだけど。
ぼんやりとしていると、ナンパされた。
相手は二人。
遊びにいこうと誘われて、腕をひかれて、私は立ち上がる。
まだ胸は痛むようだ。
その痛みを忘れたくて、いいかと遊びにいこうとした。
ナンパされてこわいめにあったこともない。
友達になれたり、つきあったりもした。
これも何かの出会いと思ったのに。
私の腕を別の手が掴んだ。
「悪いけど、こいつ、俺と待ち合わせ。ちょっと酔ってるみたい」
なんて彼氏みたいなことを言っている背中をぼんやりと見上げた。
ナンパ男たちは逃げるように私の手を離していって、その広い背中は私を振り返り、睨んでくる。
隆太だ。
「……なんで睨むの?」
「おまえが無防備だからだろっ。ナンパについていくなっ」
「なんで隆太が言うの?」
「ムカつくから」
答えになっているのか、答えになっていないのかもよくわからない。
だって、さっき私を無視したのは隆太だ。
「…私、隆太のこと振ったよ」
その原因くらい、わかってるから言ってやった。
隆太の表情はあからさまに不機嫌になる。
…怒らせるつもりじゃなかったけど、怒ってしまったみたいだ。
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