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よかったのか悪かったのか、なんにもわからない。 隆太に恨まれているのはわかるし、こういう仕返しをされても仕方ないとも思う。 心は痛むほどまだ隆太を忘れていなかったし、隆太でよかったんじゃないかとも思う。 だけど…、こんな性欲処理にされて喜ぶ女なんていない。 「血、服につくからっ」 隆太は私の腕を握って立たせて、どこから持ってきたのか、タオルで私の足を拭いて。 私は隆太の手を止めて、隆太から逃げようとして。 隆太は私の肩を掴む。 「……ごめん。だって…ずっと…。泣くなよ。ごめんって」 隆太の手のひらが私の涙を拭うように顔を撫でる。 ひたすら隆太から目を逸らして顔を背けていた。 涙は勝手にこぼれて止まらない。 「……もう一回。ラブホ入る前からやり直したい…。千香、ごめん。痛い?」 「もう二度としない。えっちなんて絶対しない」 「ちっ、ちがっ、そういう意味じゃなくてっ。……千香」 隆太の手は私の両頬を包んで、視線をあげると隆太は私を見ていた。 「とりあえず俺から離れてもいいから下半身の処理を…」 視線を下に向けると、私の足を血液が垂れていた。 「…隆太がした」 「……したかったんだよっ。他の男とはなんの感情もなくヤるくせに、俺にはヤらせないって…」 「してないっ!」 「……ごめんなさい」 隆太は落ち込んだ様子を見せた。 私の隆太はもういないはずだ。 お風呂に入って、血を流して体を洗って。 のんびりと湯船に浸かりながら思う。 …隆太の初めては、どんな人だったんだろう…。 ぼんやりとそんなことを考えていた。 まだ血は止まってくれなくて。 湯船のお湯を抜いて、シャワーをもう一度浴びてあがる。 お風呂を出たそばの洗面台のところに隆太はいて、鏡越しに目があって、私は慌ててバスタオルを手にして背中を向ける。 体にバスタオルを巻きつけて体を隠す。 「……千香の服、洗っていただけ」 「……着るものないんですけど。帰れないんですけど」 「終電出てるからどうせ帰らないだろ。しばらく下着とバスタオルでいれば?朝には乾く」 誰がそうしたの? 言いたい気持ちを堪えて隆太を見ると、隆太は鏡越しに視線を一度合わせて、視線を逸らす。 ……誰としたの? 私の知らない隆太の1年。 私の知らない隆太の女友達。 …嫉妬するなんて馬鹿みたい。
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