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「…どこまで鈍くて、どこまでわかってるのか、おまえ、本気でわからないっ」
なんか怒った。
もう面倒だから無視して、部屋の中が静かだから音楽をかけてみる。
隆太の腕は私の体に回ってきて、私の首筋に顔を擦りつけてくる。
「……何回でもできそう。すごく…、ずっと…」
隆太の手は私の胸に足にふれて、私は隆太の手を慌てて払う。
「……どうしても無理矢理してしまいたくなるのは俺のせいじゃないと思う」
「私、なんにもしてない。…彼女は?いないの?いるの?」
隆太を振り返って聞くと、思ったより距離が近くて、鼓動が私の体に響いた。
「……いる」
いるのに、どうして私に手を出すの?
聞いたら泣きそうだからやめた。
私はそんなに軽い女なのだろうか。
簡単な女なのかもしれない。
母もあんな人だし。
その程度の女なのだろう。
「彼女とすれば?何回でも何十回でも」
「……嫉妬してくれたっていいだろ」
「どうして嫉妬しなきゃいけないの?私は今日、1年ぶりに会っただけ。つきあってもいない。何を嫉妬するの?」
「……正論で責めんなよ。したかった。千香と。ずっと」
「1年ぶりに会って、ずっと?下手な嘘はつかないで。私のこと忘れていたときもあるでしょ?彼女いるのに、そんなの口説き文句にもならない。
はっきり言えば?ただの性欲処理。私が憎いから無理矢理しただけ」
そこまで言ってあげると、隆太は私の言葉を止めるように私の口を手のひらで押さえた。
「何を言っても伝わらないのはわかった。はっきり言う。俺はおまえをずっと犯していたい。余計なことを何も言えないくらい、ずっと喘がせていたい。今の俺はおまえしか見えていない。俺の心を弄ぶおまえしか見えない」
まっすぐに目を見て、甘いようで甘くない言葉を吐かないでもらいたい。
私には隆太を弄んだつもりなんかない。
まっすぐに気持ちをぶつけてた。
別れたあとは気持ちをぶつけるのをやめた。
彼女いるくせに、私しか見えない?
馬鹿にしないで。
本気で思う。
「欠片くらい伝われよっ。俺はずっとおまえに惚れてんだよっ。おまえだから、放っておけなくて、おまえだから、…どんなに無理矢理でも俺の腕の中に置いておきたい。おまえの翼、全部むしって飛べなくしてしまいたい」
隆太は私の背中を強く抱きしめてきて、私は私でこの腕の中で絞め殺されたいと思う。
…隆太が男のくせに泣くから。
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