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私の背中に翼があったとしたなら、それは飛べない真っ黒な羽だろう。 飛べないからもがいている。 もがいて絡まって一人で苦しんでいる。 誰かに大切に育てられてきたような真っ白な羽があったのなら。 もっとこの世界をうまく飛べたかもしれない。 私は鳥籠を持っていない。 私は上手く羽ばたく翼も持っていない。 あなたの鳥籠には、綺麗な声で歌う、綺麗な羽を持った鳥が一番似合うだろう。 隆太が落ち着くまで、ひたすらおとなしく抱きしめられていた。 腕の中は暖かくて、隆太の肌が気持ちよくて、肩に頭をもたせかけて、隆太を感じていた。 隆太は私を腕に抱えたままベッドに倒れ、私ももちろん道連れに倒れて。 隆太の片手が私の顔を撫でる。 手のひらに軽く唇を押し当てて目を開けると、隆太は私を見ていた。 どこか寂しげで、どこか不満げで。 隆太の頭に手を当てて、私からその唇に唇を当てた。 軽くつけて、物足りなくて、唇を擦りつけるように当てていく。 「……抱きたくなる」 「えっち嫌いになったかも」 答えて、もう一度唇を当てていくと、隆太の唇から吐息がこぼれる。 隆太の体を覚えていられるように、その腕を胸を背中を撫でる。 隆太の手は私の髪をかきあげるように頭にふれて、私の唇にキスをくれる。 この部屋に最初に入ったときのようなキスじゃなくて、初めてキスしたときのような、甘いキス。 そのキスに夢中になってた。 小さく舐めて啄むように吸って、絡ませて。 隆太の転がされるままにその体の上に乗って、ひたすらキス。 頬に額に目蓋に鼻に。 また唇に。 隆太の手は私の背中を滑る。 その手を捕まえて服の中の素肌にふれさせると、私の背中を暖かい手のひらが滑る。 「……ちょっと…待った」 「なに?」 「…千香の尻の下でひくついてる」 隆太は恥ずかしそうに言って、私は腰を揺らす。 「だから無理だってっ。理性で堪えさせるのやめて」 「隆太に理性なんてあるの?」 「なかったら縛って犯してる。……もう一回、今度は…本当に優しくする…」 「痛いからいや。キス、もっとしたい」 「……俺の全身にしてくれ」 隆太がもういやとでも言いたげに言って、私は隆太の全身にキスをする。 どんなに痛くても。 私は隆太が好きらしい。 でも彼女、いるらしい。 もう戻れない過去は忘れなきゃいけないらしい。 「大好き」 小さな声で言ってみた。 隆太の手は強く私の手を握った。
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