Code

14/19

584人が本棚に入れています
本棚に追加
/606ページ
淋しいから、つらいから、苦しいから。 『今』から逃げたくて、手を引っ張られてついていく。 相手は誰でもよくて。 あんなに嫌だったはずなのに、二股でもよくて。 相手の女にどんなに睨まれてもよくて。 一時でも癒されるから、抱きしめてくれるから、体もあげる。 だけど、熱もない恋愛でもないそんなもの、ただの虚しさをあとになって感じる。 虚しくなるほどあがいて、絡まって、一人で苦しんでいる。 朝、いつものように仕事にいくために家を出る。 部屋の鍵をかけて、階段で降りようと廊下を歩くと、隣の部屋の扉が開いた。 私はどれだけこの人と縁があるのか。 隣の部屋から出てきたのは隆太だった。 思いきり無言で顔を見合わせた。 「隆太、早くいかないと学校、遅刻するよ?」 なんて隣の部屋の住人の声が聞こえてくる。 「あ、うん。…いってきます」 隆太は答えて、部屋の扉を閉めて、私はその隣をすり抜けてエレベーターもあるけど階段で降りていく。 2階だし、エレベーター待つより早い。 隆太はまた別の彼女ができたらしい。 私の隣の部屋というのはやめてもらいたい気がする。 別れても、いくらでも次に彼女になる人がいるんだなと思う。 モテる男がよかったなんて言わないし、隆太じゃなきゃ嫌だったなんて言わない。 なのに、今も心が痛む。 私の心をまっさらな新品にして返してくれと言いたい。 駅に向かって歩いているとクラクションが聞こえて、振り返ると見知らぬ車。 道を譲ったつもりだけど、よく見ると運転席にいたのは隆太だった。 立ち止まると隆太も車を停める。 「乗っていく?駅だろ?」 「遠慮します」 「……別に襲わない」 「遠慮します」 「……なぁ?メールに返信くれなかったのは千香で、俺は3ヶ月以上待ってた」 「誰も新しい彼女がいることを責めていません」 「……おまえが無視しようとするからっ」 無視でいいじゃないかと思う。 私と隆太はつきあっていないし、…友達でもない。 …友達…なのかも。 もうよくわからない。 「……家、出た?一人暮らし?…引っ越すつもりない?」 「ありません。めったに会わないと思うので気にせずに隣の家でいちゃついてください」 「……別れる。おまえに会ってしまったから」 まるで私が疫病神のようだ。 嫌な言い方をしないでもらいたい。
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

584人が本棚に入れています
本棚に追加