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近くにいないほうがいいって思ったりもする。
近くにいるから引き寄せられてしまうけど、いなければ私は別の人に甘えている。
隆太が簡単に私を求めてくれるような言葉を言うから…、突き放す言葉を持てなくなってくる。
それでも私は私を隆太に言う勇気もない。
理解をされたいと思うのに、理解をされなかったときを思うと、いなくなるのが淋しい。
家も職場も知られていて、帰ろうとすると隆太の車があった。
気がつかないふりをしたら、メールがきて、それも気がつかなかったことにしたら、追いかけてきた。
ストーカーだ。
悪い気はしていない私が一番厄介。
「飯、どうする?どこか食べにいく?」
「家で作る」
「俺のぶんは?一緒に作る?」
「……思いきり家に上がり込むって言ってない?それ」
「迎えにきて送って終わり、なんて誰がするかよ」
「隣の家の住人と鉢合わせしたら、私が気まずいんだけど」
「……もう彼女つくらない。千香が無反応な時期続いても絶対つくらない」
「えっちする相手欲しくなるよね?」
「……しないっ!」
「そこ、絶対って言わないんだ?」
聞いてあげると隆太は横目に私を見て、私はにっこり笑ってあげる。
「おまえ、俺を虐めて楽しい?」
「とても」
「……千香の男関係聞いてやろうかと思ったけどやめた」
「なんで?教えてもいいよ?」
「聞きたくない。今、俺と一緒にいるのがすべてでいい」
「…私も同じこと言いたいのに、言えないのはどうしてだろうね?」
「聞かなくても俺が尻尾出しまくってしまってるからだろっ。悪かったなっ。……それでも一つだけ言い訳していい?」
「どうぞ」
「……他の女はいくらでもすぐに別れるって言葉が出るけど、…つきあっていなくても、一番千香と一緒にいたい」
二番はだーれ?
なんて思うのは最低だろうか?
隆太はうまく口説いてくれていると思う。
私がそのままを受け入れてあげないだけ。
何も言わなくていいって思うの。
ボロが出るなら何も言ってくれなくていい。
口説き文句もいらない。
だって…、昨日の夜ね、隣の部屋から隆太の声が聞こえたから。
口説き文句はいらない。
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