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私だけ…なんて思わなくても、私は私にどんどん甘くなっていっている気がする。
一人暮らしの部屋に初めて入れた男は隆太で、その部屋で初めて私を抱いたのも隆太。
抱きしめてくれる腕に甘えていた。
隆太じゃなくても大丈夫なのに。
私も刷り込み現象なのだろうか。
でも…。
私は不意に隣の部屋の住人を気にして壁を見ている。
隆太は平気なのかもしれないけど。
何か私が悪いことをしている気分だ。
だから部屋にはもう入れないってしてみたりするけど。
私は私に甘くて、送ってもらったあと、私がもう少し一緒にいてほしくて、結局部屋にあげてしまう。
私は悪いことをしていないはずなのに、なぜか罪悪感。
「今日も泊まっていい?」
「だめ。生理だしえっちできないよ」
「そういう目的ばかりじゃねぇよっ。…千香といるとコウといる時と同じくらい口が悪くなる…」
「じゃあ、どういう目的?」
「一緒にいられるだけ一緒にいたい目的。セックスも…したくないわけじゃないけど。千香と素肌擦り合わせて眠るのが好き」
隆太は車を駐車場に入れようとする。
いいよ、なんて言ってもいないのに部屋にくる気満々。
「隆太の部屋にいきたいかも」
「千香の部屋より狭いけど、それでもいい?いいなら千香が荷物持ってくるの待ってる」
簡単に入れてくれるらしい。
私は部屋に隆太の部屋に泊まるための荷物をとりにいく。
明日も仕事だから着替えやパジャマ。
一泊旅行みたいな荷物ができあがる。
隣の部屋の玄関が開く音が聞こえた。
下には隆太が車で待っている。
荷物をまとめきっても、5分くらい、部屋でぼんやりしていた。
荷物を玄関に置いて、廊下から下を覗いてみる。
隆太の車のそばには、女の子の姿。
何か自分でタイミングを逃している。
何も気にせずにいけばいいのに、どうしても邪魔になりそうで、睨まれてしまいそうで、いけない。
尻尾、隠してくれていればいいのに。
…隠してくれていても、隆太には山瀬とのつきあいほど、軽くはいられないみたい。
私だけ見ていてと望む心がある。
嫉妬してる。
淋しくなる。
部屋の中、玄関に座っていた。
私は怯えている。
なくしたときを考えて。
ただの弱虫だ。
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