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「授業中だけメガネ。どうしてメガネ、メガネって晃佑も加藤くんも…」
「いや、似合っていたから。真面目な感じがしていいなぁと。ほら、俺もコウもこんなもんだし、そういう子には引かれたり馬鹿にされそうで声をかけるの躊躇う。同じような馬鹿っぽい子には簡単に声をかけたり、かけられるのに。だからちょっと今、意外に思ってる」
私が見る向こう側にも壁があるって言われている気がする。
「見た目がすべてでもないけど、見た目って重要だよな。コウはその見た目と中身でモテるフラれ虫だけど」
加藤くんは笑う。
「……どうして晃佑はフラれるの?加藤くんは晃佑のことよく知ってるからわかるよね?」
「さあ?彼女を妬かせるからじゃない?結局は誰に対しても優しすぎるんだろ。…なんでモテる男になれると思う?見た目だけで、あんなに知り合い増えると思う?」
誰に対しても…優しすぎる。
見た目…。
友達として続くのは見た目だけじゃないからなのだろう。
…私、もう彼女じゃないはずなのに、晃佑のことばっかり考えてる。
「俺はコウの彼女になった女くらいにしか親しくしないけど」
加藤くんは私の肩を抱いてきて、私は加藤くんを見上げる。
「私、もう元カノです。晃佑ならもう新しい彼女できてるでしょ?」
「それが今までの恋愛サイクルと違って、まだできてない。相当な痛手を負わせたと思ってるんだけど、どうやって振ったの?」
「フラレたのは私ですっ」
「ないない。じっくり聞いてみたいから、遊びにいこう?」
加藤くんはにこっと私に笑いかけて、私は加藤くんの手を振り払う。
話を聞くのに、その狙ってるような軽さをやめてもらいたい。
晃佑に伝わりそうで加藤くんと遊びたくもない。
私が…軽い女に見られそうで嫌だ。
「ガードかたっ。今日のところはこれで諦めるか。…次の恋愛、早くしたほうが気が楽になるよ?チカちゃん?」
「狙わないでください」
「…かたい…。あ。そうそう。コウの知り合い、職場とか行きつけの店とか色んなとこにいるし、色んな奴がいるから、気をつけたほうがいいよ」
「なにを?」
「変な遊びに誘われないようにってこと。犯罪やクスリ、そっちには染まらないようにな」
「晃佑は?」
「仕事に真面目な鳶職」
加藤くんはそう笑って答えて、私に手を振って歩き出す。
もう少し…晃佑のこと聞きたくて、引き留めたくなるのを止めた。
私、本当に晃佑のことばかり…。
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