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忘れたくて、忘れられなくて。
スギが紫苑とつきあったりするから、紫苑がスギを心配して、スギの友達に会いたいなんて企画するから。
隆太と顔を合わせてしまった。
私が声をかけないでいると、隆太も拗ねたように声をかけようとしなかった。
その次に会うことになったのは、私が紫苑に遊んでもらおうとして、紫苑が隆太のバイト先に私を呼んだとき。
久しぶりに隆太にかけられた言葉は自分でもよくないなと思った注意。
最低最悪。
胸の奥にずっといる。
離れなきゃいけないのに、離れられない人がいる。
私は疫病神だ。
レンタル彼氏に寄りかかって頭を撫でてもらいながら本当に思う。
「千香の気持ちは?」
「……ずるずるしているのもずるいでしょ?」
「別に。互いに気持ちがなければ、ずるずる引きずることもない。聞きたいのは千香の気持ち」
「…どうやったら私に会う前の隆太にしてあげられる?」
「なにそれ?隆太がいつ千香に出会ったことを悔やんだ?で、千香の気持ちは?…自分の気持ちを話すの不得意だろ?」
浅いつきあいだというのに、私をわかったように言わないでいただきたい。
…そのとおりだけど。
深く聞くことなく浅い関係でいられる男友達が好きだ。
カラオケにきて、私と紫苑はいったい何をしているのか。
私は気を取り直して歌いたい曲を探そうとして、紫苑の肩から起き上がる。
と、私の頭は紫苑に抱き寄せられて、また同じ位置に戻される。
私がスルーしたからだと思われる。
「……あんまりくっついていたら、紫苑、またえっちになるんじゃない?」
紫苑の顔を覗き込むように見て更に話題逸らし。
「…衝動的にまたキスしそうだから、その至近距離で目を見ないでほしいかも」
紫苑は私から目を逸らす。
紫苑の頬に手を当てて、その唇に唇を近づけようとして、紫苑の視線は私を見る。
私は息がかかる距離で止めて、じっとその紫苑の目を見る。
「…焦らし?」
「…されたいの?」
意地悪みせたら、紫苑から唇を当ててきた。
惑わされてくれないと浮気にしかならない。
困る。
息を漏らしながら、なんとか紫苑の唇から逃れようとするけど、紫苑は離してくれなくて。
私はソファーの上に倒されて、紫苑の唇が離れる。
太股に寄せられる紫苑のかたいものに私のほうが恥ずかしい。
「…千香の気持ちは?…俺にちょっと片寄ってくれていたりして?」
なんて紫苑はからかってくれる。
…仕返しされた。
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