584人が本棚に入れています
本棚に追加
/606ページ
「…落とすつもりもないのに、それ、卑怯」
「千香ん家帰ったらヤル気はある。ここでしたら警察に捕まる」
紫苑の手は私の太股にふれて撫でて、私は紫苑の背中に腕を伸ばす。
紫苑は私を膝に乗せるように起き上がる。
お尻にふれてくる紫苑の手を手を重ねて止める。
「まったく紫苑に興味ないとは言えないから、からかっちゃだめ」
「…半分本気」
「スギを泣かせたら…」
「なんで俺が脅されるほうに…っ。…千香。千香ちゃん。隆太に言ったりしないから、正直におまえの気持ち言ってみ?まだ隆太が好き?」
紫苑は私の頬に両手を当てて、子供をあやすような目で私を見てまだ聞いてくれる。
「……考えたくない。逃げていたい。…好きだから。きっと」
「……俺がそれ言われたら…。逃がさない。もっと惚れて。惚れてやるから。……って答える」
言われたい。
紫苑がまっすぐに目を見つめて言ってくれるから、落とされてしまいそうになる。
「……スギが羨ましい。隣の芝生は青く見える?…のかな?…でも、羨ましい。そんなこと言って私が惚れたらどうするの?」
「どうしよう?…とりあえず…キスする」
紫苑はキスしようとしてきて、私はその唇を手のひらで遮る。
「そういうの言ってくれる人、いない?」
「俺も半分本気だって言ってるのにっ。……連れと恋愛したことないからわからない。なぁ?千香は隆太にどうあってほしいんだ?」
「隆太の気持ちのままでいてほしい」
「本心?」
「そう。だから紫苑は何も隆太に言わなくていい」
紫苑は少し何かを考えて、私はこれがすべてとは言えないものを持ちながら、紫苑の肩に額を当てる。
だって、いつもいつも同じ気持ちでいたりはしない。
ひどく淋しいときには会いたいと思う。
誰を傷つけてもかまわないから一緒にいてと甘えたいときもある。
今、私がそう言えるのはここに紫苑がいてくれるからだ。
もう一つ、隆太は隆太の気持ちで、紫苑の元カノとちゃんと接して欲しいって思う。
隆太は……私のものじゃない。
「あいつとはけっこうな腐れ縁なんだけど。あいつが本気なのはおまえだけだと思う」
「…慰めてる?……体でなら慰められてあげようか?」
「……したい」
紫苑が馬鹿なことを言ってくれるから、手首のスナップきかせて、その頬を軽く叩く。
叩いて、撫でて、ありがとうと気持ちを込めて頬にキスをした。
最初のコメントを投稿しよう!