Cry with pain

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そんな紫苑をかわいいやつだと思う私は、きっとなにか騙されているだろう。 パスタをゆであげて、ソースとからめて簡単に作って、食卓に持っていって食べる。 紫苑も食卓に移動してきて、一緒にのどかな休日。 食べ終わったあとは昼寝して。 紫苑に膝枕を頼んだら本当に眠ってしまっただけだけど。 起きたら紫苑の腕の中で眠っていた。 外はもう夕暮れ。 洗濯物入れて畳んでいると紫苑が起きた。 私より睡眠時間が長いと思う。 「夜、なに作る?食べにいく?」 ベッドの上をごろごろしながら、紫苑は聞いてくる。 なにか変なものを飼ってしまっている気がする。 紫苑は私がたたんだ下着を手にして広げて眺める。 「…ちょっと、それブラ。返して」 「パッド詰めてる?このサイズないだろ?」 「上げ底していません。さわったこともないくせに」 紫苑から下着を奪い返してたたんでクローゼットに詰めていく。 「胸より太股と尻のほうが好きなもので。千香に着せたいの選びたい」 「スタイリスト?紫苑の好みってセクシーなのでしょ?」 「たまにふわふわのロングスカートなんかもいいかも」 紫苑はクローゼットの中を覗いて、私にあてて見立ててくれる。 私は笑いながら、紫苑が選んだものを着てファッションショー。 なんて遊んで、外へ食べにいく。 紫苑のバイクに乗りたいって言いまくったら、渋々とバイクを出してくれた。 でも連れていかれた先は以前に紫苑と待ち合わせをした隆太のバイト先。 とことん紫苑は私と隆太をどうにかしたいらしい。 「今日、絶対泊めてやらない」 「隆太連れて帰ろう。というか帰りは隆太の車に乗せてもらってくれ。本気でこわかった」 「二人乗りこわいの?」 「女を乗せるのはこわい。初めて乗せた。二度と乗せたくない。どっかに吹っ飛ばして怪我させたらと思うと」 「だから何度もちゃんと捕まってるか確かめたんだ?」 「そう。知らない間にどこかに落としていそうでこわい」 「……隆太、いなかったら電車で帰ってあげる」 「終電気にして遊ぶことになるなら、俺の家に連れてくって」 「スギに刺されたら紫苑に請求する」 「刺されるとしたら俺だろ」 紫苑は私にかまっていることがどういうことかわかってはいるようだ。 本当、お節介。 スギも馬鹿。 …私が一番馬鹿。
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