Cry with pain

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「コウも店長もなに勝手に話を進めてるんだよ。 千香、おまえも軽すぎ。男なら誰でもいいのか?」 また怒られてる。 男なら誰でもいい。 …そのとおりだなんて言えない。 紫苑が私にかまうことがなくなるのなら、私が甘えてもいいと言ってくれる人なら…誰でもいい。 軽い…と思う。 軽くていいじゃないって思ったりする。 隆太は…私のじゃない。 私は俯いて、隆太から顔を逸らす。 胸が痛いのは…、きっとまだ好きなのだろう。 上書きできるほど他に好きな人が欲しい。 「おまえ、千香に嫌われたくて怒ってばっかりなわけ?それともそれって嫉妬?」 紫苑が口を挟むように聞く。 「コウ、おまえが一番ムカつく。千香にかまうならトモちゃんとるぞ。嫌ならもう千香にかまうな」 「……知花を奪うって…おまえも千香と似たような脅しするよな。 おまえが本気で知花を奪いたいって言うならやってみてくれてもいい。俺はそれで知花の気持ちをはかることもできるし。もしも知花の気持ちがおまえにふらついて奪われてしまったら、遠慮なく千香をいただく」 紫苑がそんなふうに返すから、隆太は紫苑に掴みかかっていって。 紫苑はその唇に笑みを浮かべると、隆太を殴ろうとして。 隆太はそれをかわす。 「…っぶね。おまえ、今の本気で殴ろうとしただろっ?」 「本気。人の弱味のように脅すだけ脅して、自分の感情を口にしないのがイラつく」 「なんでおまえの彼女でもない女のことで俺が殴られるのか意味わからないって言ってるだろっ。千香に惚れてるとかぬかすなよ?おまえがトモちゃんに惚れてるのはよく知ってる」 「だからなんで俺の話になる?おまえの話はないのか?」 なんて二人は言い合い。 1組いたお客様は逃げるように帰って、人見店長が精算をする。 私は私の問題でもあるはずなのだけど、蚊帳の外に置かれて、人見店長についていくようにカウンター席に座る。 子供…のように思う。 私も含めて。 隆太も紫苑も。 「千香ちゃん飲めるほう?」 「何かもらえますか?」 人見店長はウィスキーなんてものを出してくれて、私は初めてウィスキーに口をつける。 ごくごくとは飲めそうにないロック。 一口飲んで溜め息をついて、煙草に火をつけて、溜め息をつくように煙を吐き出す。
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