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一人で部屋に帰ってコーヒーを淹れて一服しているとインターホンが鳴った。
隆太だけか紫苑もいるのかはわからないけど扉を開けた。
紫苑と隆太と…なぜか隣の住人が増えていた。
「こんばんはー。コウちゃんとリュウちゃんと一緒にお邪魔しちゃってもいいですか?だめなら、よければあたしの家のほうにきませんか?」
にこにこ笑顔で彼女は言ってくれるのだけど…。
複雑な気分になる。
隆太の気持ちがわかるような気がしたり、しなかったり。
とりあえず3人を部屋に入れた。
コーヒー3つ追加で作る。
紫苑が当たり前のように慣れたように手伝ってくれる。
紫苑のほうが彼氏のように思う。
レンタル彼氏。
「下で蹴りあっていたらミクが帰ってきて、ここにいくって言ったらついてきた。千香の了承あればで、千香、了承したしな」
「だってコウちゃんとリュウちゃんが一緒にいるのってそんなにないことだもん。仲悪いのかいいのかわかんない。…千香さんはどう思います?」
紫苑に答えるように言って、ミクは私に聞いてくる。
「私もわかんない。…ねぇ、ミクに聞いてみたかったことがあるの。聞いてもいい?」
私は淹れたコーヒーをミクに出して聞いてみる。
「いいですよー。まず、あたしの自己紹介からしちゃいます?晃佑と3ヵ月くらいつきあって、隆太に乗り替えちゃいました。で、隆太にフラれまくって、現在、違う人とつきあってます。なので、あんまり警戒はしないでくださいね?コウちゃんもリュウちゃんも好きなんでなついてるだけです。邪険に扱われまくりでめげちゃうけど、最後はなんだかんだと優しいから好きなんです」
ミクは聞いてもいないのにそんな自己紹介をくれる。
紫苑も隆太もミクから顔を逸らしまくりだ。
それぞれにミクに対して何かしらあったからだろう。
それでもここにミクを連れてきた。
ミクの言うまま、最後は優しい人たちなのだろう。
その最後まで粘れるミクもすごいと思う。
私ならめげる。
ミクはけっこう強いと思う。
「じゃあ、もう泣いてない?」
そこを聞くと、笑っていたミクの表情は少し崩れて、苦笑いみたいになった。
よくしゃべる子みたいなのに、頷いただけ。
悪いこと聞いたと思う。
でもミクは少し俯いた顔をあげて私に笑顔をもう一度見せる。
「強がりだったりする?」
「千香さん、ストレートに聞きすぎです。…いいけど。あたし、どうせ馬鹿だから」
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