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その日はミクがひたすらはしゃいで、紫苑と隆太にかまってもらおうとしまくって。
紫苑も隆太も逃げるように寝たふりをして。
ミクが帰ると、疲れたかのように本当に眠った。
私のベッドに男が二人、取り合うように眠ってくれて、私の寝る場所はソファーになった。
仲がいいのか悪いのか、隆太と紫苑は本当にわからない。
同じベッドで眠ることは嫌ではないらしい。
ある程度気を許した仲ではあると思う。
二人の寝顔を眺めて、お布団をかけてあげて、私のお布団を収納から取り出す。
開けていない段ボール箱が目に入って、開けてみた。
アルバムとか小さい頃の思い出を詰めた箱だった。
アルバムを開いて眺めていく。
赤ちゃんな私。
姉に抱かれて母が隣にいて。
カメラマンは父だろう。
家族全員で写っている写真もある。
私は父に抱き上げられている。
みんな笑顔で幸せそうな家族だ。
壊れたのはいつだろう?
小学校の頃には喧嘩していた気がする。
学校の写真以外の写真がない。
高校の集合写真を見て、そこに隆太を見つける。
紫苑も見つけて、スギも見つけて。
卒業アルバムを開いて、なんだかいきなり思い出を掘り返してしまっている。
1ページずつゆっくり眺めていたら物音が聞こえて、顔をベッドのほうへ向けると、目を擦りながら紫苑が起き上がっていた。
「隆太の隣はあまり眠れないの?」
聞いてみると紫苑は隆太を見て、軽く踏みつけて私のそばにくる。
踏まれたのに隆太はよく眠っている。
紫苑のいなくなったスペースに寝返りをうって、気持ちよさそうな眠りの中。
「千香の隣のほうがいいらしい。高校の卒アル?懐かしすぎ」
「紫苑、隆太とよく一緒にいるよね」
「5人くらいでいたはず」
「あと女と一緒にいる」
「…高校だけで40人くらいつきあったかもしれない。マニアックすぎて覚えてないけど」
「女タラシ」
「告ってくるのは向こうだって。捨てられるのは俺だけど。……千香も知花もかわいいな、これ。知ってる?男の中で騒がれていたの」
紫苑は私とスギの写真をうれしそうに指先で撫でて聞いてくる。
「知らない。私もスギも細々とした高校生活だったと思う」
「そう?…俺には目立って見えたけど」
「スギのこと?」
にやっとからかって笑うと、紫苑は私の口を手のひらで覆う。
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