Change one's mind

8/21

584人が本棚に入れています
本棚に追加
/606ページ
呼吸をこぼしながら紫苑は唇を離して、私は紫苑の腕に寄りかかったまま吐息をこぼす。 「……受け止める姿勢、いい加減やめる気ない?本気で浮気になりそう。……入れたい」 耳元、囁くように声をかけられて、思わず上擦った声をあげて、紫苑の手が私の口を塞ぐ。 苦しい。 目を開けると、紫苑と目が合って、その口許を指先で拭ってあげる。 「…またきていい?隆太いないとき」 紫苑は真似をするように私の口許を指先で拭いながら手をはなしてくれる。 「いや」 「一回だけでいいからっ」 「スギに何回でも受け止めてもらえばいいじゃない」 「……キスで唇塞いだまま、何も言わせず許可もとらずがいいみたいだな。攻略方法わかってきた」 「私を攻略してどうするの?」 「千香でどうしても反応してしまうから攻略しないと」 「他の子にも反応するただの女好きでしょ?」 「そこまでじゃない」 「スギにチクるよ?」 それを言うと紫苑は口を閉じて離れた。 それはいやみたいだ。 背中を丸くしていじけてくれるから、なんかちょっとかわいい。 アルバムを段ボールに入れて収納になおして、寝場所に決めたソファーへ。 リモコンで明かりを消す。 紫苑はまだいじけてくれてる。 「…膝枕のお返ししてあげようか?」 なんて声をかけてみると、のそのそ近づいてきた。 太ももを軽く叩くと、その上に私の様子を伺うように顔を見ながら転がる。 変な生き物だ。 かわいくて憎めない。 頭を撫でて、軽く頬を撫でると、紫苑は目を閉じて、私の膝に完全に身を任せる。 隆太に気がつかれる前に私も寝てしまおう。 責任放棄。 目が覚めると、私はベッドの上で紫苑と眠っていた。 隆太は?夢落ち? なんて思いながら、隆太を探すように部屋の中を見回すとソファーで眠っていた。 眠っている間に隆太か紫苑が移動させたかと思われる。 どちらもかもしれない。 ベッドから這うように出て、ソファーまでいって、その眠っている体に寄り添う。 ぴとっとくっつくと、その体温が感じられる。 紫苑も好きだけど、隆太を好きな気持ちに比べると、まったく違うもののように思う。 だって鼓動が違う。 私の中で響く鼓動。 ごめん、紫苑。 私、浮気にもなりそうにない。 流されても心はここに置いてある。 ずっと。
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

584人が本棚に入れています
本棚に追加