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仲がいいのか悪いのか。
スギが諦めない限りは続けられそうなカップルかもしれない。
悔しすぎるから振ってあげないって…、スギ、かわいいなぁと思う。
何かがうらやましい。
「…騒がしいやつらだよな。トモちゃんだけならかわいいのに。千香の家に送る?それとも俺の家くる?」
「……隆太ってスギに甘いよね」
「……かわいいから」
「私は?」
隆太のほうを見ると、隆太は私を見る。
「…憎らしい」
「それ、ちょっと言葉違うよね?」
「いや、憎い。コウに頭撫でられて悪い気してなかっただろっ。店でもコウに抱きあげられていやがったくせにっ」
…また怒られるのは私のようだ。
紫苑のようにごまかそうか。
「店のは喜んでないから。……隆太んちにいきたい。明日、私、仕事あるけど…」
シートベルトを緩めて隆太に軽く寄りかかって、下から誘うように見つめて。
「仕事なら千香の家に帰ったほうがいいだろ。……騙されてやらない」
隆太は私の目のあたりに手を当てて引き離して、車を走らせる。
…ある意味、隆太は堅物だと思う。
スギと気が合うと思う。
思うけど…、私は…。
シートにゆったりもたれて座って、会えたのにいちゃつくでもなく、普通に送り届けるだけの彼氏に微妙に不満。
スギと紫苑みたいに一緒に暮らしているみたいになりたいかもしれない。
「…拗ねてるのは俺なんですけど」
「私も拗ねてるんですけど」
「バイト先くるの禁止。気が散る」
…なんか高校の頃を思い出す。
つきあってるのか、つきあっていないのかわからなくなる。
「明日、仕事終わった時間に迎えにきて」
「バイト入ってるから無理」
都合の悪い男は…いやかもしれない。
どこに満たされればいいのかわからない。
一時期よりを戻して、ミクの泣き声で別れたあのときみたいでいて欲しいだけなのに。
文句を言っていいのかわからないうちに家の前まで送り届けられてしまった。
シートベルトをはずして、溜め息をつきたい気持ちで車から降りようとすると、隆太は私の腕を掴んで。
振り返ると引き寄せられた。
「……もうコウに会うの禁止な?」
「……禁止ばっかり」
「俺にどうしてほしい?」
「…キスして抱きしめて…愛してるって言って」
「なんかの歌詞だろ、それ」
なんて言いながらも隆太はキスをくれた。
唇だけ愛してるって動く。
もっと…。
足りない。
朝まで抱きしめられていたい。
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