Change one's mind

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一緒にいたい。 同じ気持ちのはずなのに、なにか妥協させたみたいで自分がいやになる。 うれしいって素直に喜べない。 うれしいのに、いや。 ぎゅうって隆太の手を握った。 「千香…、返事は?」 聞かれても、答える言葉がすぐに出なかった。 また拗ねた気持ち。 拗ねる必要なんてないって思うのに、頭を横に振った。 隆太の腕は私の体をぎゅっと抱きしめてくれた。 学校、仕事。 理由が理解できないわけじゃない。 でも、それ言ってたら、いつ朝まで一緒にいてくれるの? 休前日はバイトばかり。 だからって私が希望して合わせてもらうのも、私がわがまますぎるようで…いや。 言えること、言えないこと。 なんでも私の気持ち、私の考え方ばかり言っていたら…、すぐいなくなっちゃいそうだ。 留めた言葉は多い。 本音ばかりでいたいのに、怒らせたくなくて反対する言葉も言えなくなったり。 私は何も制限できないのに、制限ばかりされる。 いろんなことが積み重なると息苦しい。 ただ…、自分の気持ちに素直に、隆太が好きなだけなのに。 私が変わったのか、隆太が変わったのか。 私や隆太の環境が変わったのか。 こんなはずじゃなかったと思うばかり。 隆太のバイト先にはいけないし、おねだりはしちゃいけないし。 仕事が終わると隆太のメールを待ってるだけ。 バイトばかりしてる。 休みなら、迎えにいこうか?とメールがくる。 私の仕事が終わる時間くらい、隆太はもう知っている。 それでも仕事だって毎日定時というわけでもない。 定時だなと時計を見ながら、終わらない苦情の電話に頭を下げて。 このまま真夜中までつきあわされるのかなと思いながら、帰っていく同じ職場の人に会釈だけで挨拶をする。 職場のたった一人の男とも言える、20後半の社員が私の電話が終わるのを欠伸をしながら待っている。 電気を消して戸締まりするため。 決して狙うとかそういう関係ではない。 挨拶と業務的な会話しかしたこともない。 お腹空いた…なんて思いながら、私が直接どうこうしたものでもないことに謝罪を繰り返す。 クレーマーに当たると厄介だ。 クレーマーもお腹が空いたようで、ラーメン食べるとか言いながら、ずるずるしながら、まだ終わらない。 ただのかまってほしがるご老人。 それでもお腹が満たされたからかクレーマーも落ち着いた。 やっと電話を切ってくれた。
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