584人が本棚に入れています
本棚に追加
/606ページ
謝るのが仕事みたいな仕事をして、精神的にぐったりきて、癒しのはずの彼氏に怒られるようなことして、私生活も充実していなくて。
癒されそうと思う場所に逃げたくなるときもある。
社員と店の前で別れたあと、駅へ向かいながら隆太に電話をかけた。
迎えにきてくれることがうれしく思う。
駅前で隆太を待っているとナンパされて、しつこく声をかけてくるナンパをひたすら無視していたら隆太の車を見つけて駆け寄る。
助手席の扉を運転席から身を乗り出して開けてくれて、そこに乗せてもらって。
隆太は車を走らせてくれる。
「…肉と酒くさい」
「焼肉食べた。家に帰ったらお風呂入りたいかも」
くんくんと自分の服のにおいを嗅いでみる。
自分ではよくわからないけど、においはついているみたいだ。
「隆太はご飯食べた?」
「千香から電話きたあと、うどん食べにいってた。肉食いてぇ。コンビニ寄ってなんか買っていこ」
「本当に泊まるの?…えっちするため?」
「……なぁ?そうやって俺をがったがたに崩すのやめないか?…それ目的もあって悪かったなっ」
崩しているつもりはないけど、そういうこと聞くといやみたいだ。
一緒にいてくれるのうれしいって、そういうのだけがいいみたい。
何も知らないわからないふりをしているのがいいみたい。
カマトトでもぶりっこでもなんでもいいから、純粋な女の子でいるほうがいいのだろう。
……嫌われたくないし、それでいいとも思うけど。
私は…なんだろう?
何を言えば隆太は笑ってくれるだろう?
仕事の愚痴なんて言ってもいいのか。
甘えた言葉はどこまでがおねだりと受け取られてしまうだろう。
どんな会話をすればいいのか。
悩んで言葉も出なくなった。
他人…だから。
彼氏なんて他人だから。
いつかはまたいなくなっちゃうから。
「…したくない?」
何も言わなかったら、隆太は信号待ちで不安そうに聞いた。
わかんない。
悩みまくって、もうなんにもわかんない。
頭を横に振って顔をあげて隆太を見ると、照れたようなうれしそうな笑顔。
愛され方が一番わからない。
喧嘩はしたくないし。
聞きたくもないし。
何を言えばいいのかわからない。
息苦しい…なんて思うのは違うよね。
聞けない私が悪いだけ。
どうやって隆太とつきあっていたのか。
もう忘れちゃったかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!