584人が本棚に入れています
本棚に追加
千香にひたすら話を聞いてもらってしまった。
そのためにご飯にいこうって言っていたわけでもないのに。
千香は文句を言うでもなく、千香の考え方で私にアドバイスみたいなことを言ってくれて。
デザートも食べてお腹いっぱいの別れ際、千香は私の頭を撫でた。
「まさかスギから恋ばな聞けるとは思ってなかったよ。また聞かせてね」
なんて言ってくれる。
「そんなに意外?」
「だってあのスギに恋愛なんて…って思う」
「…私って千香の中だとどんなイメージなの?」
「カタブツ。モテそうなのに男を寄せ付けない」
何か悪口を言われてしまったように思う。
モテそうなのにって、モテたことないし。
男に声をかけられたことはなかった。
…寄せ付けないイメージで寄ってこないのかもしれない。
あまりにうれしくなくて、頬を膨らませていると千香は笑う。
「だから余計に紫苑とスギがっていうのが意外だったんだってば。スギ、真面目な男しか受け入れそうにないのにって。紫苑も軽く遊べる女しか受け入れそうにないのにって」
私に関して言うなら、そんなことはない。
遊ばれたくないけど。
真面目に恋愛したいけど。
……千香のいうことがまちがってるとは言えないかもしれない。
「でもっ、……好きになったら…どんな人でも真面目に恋愛するでしょ?」
「そうだね。遊んでる余裕なんてなくなるくらい好きになったらね。……紫苑、けっこう真面目に恋愛していたんじゃない?そんなこと言うスギが諦めつかないままなんだから。紫苑のどこがよかったの?」
私は答える言葉を考えてみた。
そんなの考えたことない。
嫌なところばかり、たくさん知っている気がする。
強引、自己中、寂しがり屋。
…寂しがるのは…好きかもしれない。
それに振り回されるのはいやだけど。
「笑顔?」
私は最初に晃佑に惹かれたものを答えてみた。
「……ねぇ?楽しくもない相手と一緒にいて、楽しくもないつきあいで、いい笑顔になれると思う?誰かに魅力的だと思われる笑顔になれると思う?そんなに演技がうまい人のような気がしないんだけど」
千香は穏やかな笑顔を見せて言ってくれた。
…うん。
気に入って…くれていたし。
私は晃佑の笑顔を思い出して。
また恋しくて泣きたくなった。
会いたい。
今すぐ。
最初のコメントを投稿しよう!