Change one's mind

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お風呂に入ると本当にぐったりだった。 えっちな気分でもなくて、眠りたい気分。 髪を乾かしきることもないまま、ベッドに倒れ込んだ。 お風呂で酔いがまわったのかもしれない。 ベッドの上に隆太が近づいてくる。 スプリングが揺れた。 髪をかきあげる隆太の手。 耳に寄せられる唇。 感じさせられても不快になってしまう眠りたい気持ち。 ぼろぼろ。 なんかもうぼろぼろ。 会いたかった。 一緒に朝までいたかった。 抱かれたかった。 なのに、今はいやだなんて、わがまま? 言えない。 我慢してみても、気分がのるわけじゃない。 目を閉じていると、誰にされてるのかもわからない。 唇にキスをされそうになって、手のひらで隠した。 「キス…」 「口臭気になるからだめ」 「…したいの俺だけ?気持ちよくない?」 どうせなら気がつかないまま、性欲処理にしてくれればいいと思うくらい、今は聞かれたくない。 肩の上から背中に腕を回して、隆太に強く抱きついた。 「……なぁ?俺、また何かした?」 「気持ちよくしてくれてるんでしょ?」 「……したいって言って。俺が欲しい?」 「………したい。隆太に…抱かれたい」 望むままに言ってあげたら、その唇は私の体を愛撫する。 顔を隠すように腕を当てて、我慢しまくった。 自分がどうすればいいのかわからない。 嫌われたくなくて。 傷つけたくなくて。 傷つけそう。 好きなはずなのに。 しんどいよ。 隆太がいってくれるまで、ひたすら我慢して。 かけられる言葉には頷くか頭を横に振るかばかりで。 自分の言葉、なにも言わなかった。 「目、開けて。こっち見て、千香」 言われるままに目を開けると、隆太はじっと私の目を見ていた。 「…欲望優先させてもらったけど、本当はしたくなかったんだろ?嫌なことは嫌だって言えばいい。俺にされたくないことがあれば言えばいい。わかりあえないなら、わかりあえるまで話そう? …我慢しないで。一人で抱え込まないで。じゃないと、俺が千香のそばにいる意味がない。そういうのを理由にまたおまえにフラれたくもない。 ……言って?俺にどうしてほしい?」 涙が目に浮いたのは隆太のせいだ。 こぼれた涙を手のひらで拭ってくれる。 「……癒して」 「キス…は口臭気になるようだからなしで…。 愛してる」 ぎゅって強く私の体を抱きしめて、耳元、囁く声。 癒された。 私、単純かもしれない。
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