Catch you up

2/20

584人が本棚に入れています
本棚に追加
/606ページ
驚くほどに私って単純だ。 言ってもらった言葉だけで悩みなんて全部吹っ飛んだ。 愛してるなんて言葉にされると、恥ずかしいのに本気でうれしくなって。 かなり現金。 嫌なことは嫌でよくて。 嫌がるくせに言いたいこと言えばいいって言う。 私が嫌われることを恐れるよりも前に、隆太のほうがフラレることを恐れている。 恐れているくせに、嫌なことは嫌だって言う。 遠慮なんてしない。 そういうのでいいんじゃない?って思わせてくれる。 過去のつきあいかたなんて忘れた。 だけど、これからのつきあいかたをつくっていけばいい。 隆太は…きっと私を離さない。 22才のクリスマス。 隣には17の高校3年のときに1ヶ月だけつきあった人。 4、5年前の細かいことなんて忘れた。 今のこの時間がすべて。 イルミネーションを見て、予約したレストランでクリスマスディナーを食べて。 初めて隆太が一人暮らしをしている部屋に寄らせてもらった。 私の部屋より狭いけど、思ったより片付いている。 こんなに散らかして…とでも言いたかったのに、ちょっと残念。 片付いていないところがないか、逆に家捜ししてしまう。 でも出てくるのは開きたくもないと思えるほど分厚い辞書。 しかも何冊も。 かなりいい重石になりそうだ。 弁護士になるのはかなり大変そう。 「……クリスマスまで勉強しろってっ?」 温かいコーヒーを淹れてくれていた隆太は、私の手の中の辞書を見て泣きそうな声をあげる。 しろって言えばしそうだ。 隆太はなぜか私のいうこと、よくきいてくれる。 ぐだぐだ文句を言っても、結局、私のいうとおりにしてくれている。 「大学院いくの?」 「あと2年だけ」 「そのあと、お父さんと同じ弁護士事務所?」 「父親のとこには入りたくない。身内だからってこき使われまくるのは目に見えてる」 隆太はコーヒーを机に置いて、パソコンの電源を入れて、何をするのかと思えば音楽。 隆太の選曲はほとんど洋楽で私はよくわからない。 「身内のほうが文句言えるし楽そう」 「法廷で親と喧嘩できるなら検事でもいいのに、俺の親、そういうのやってないからなぁ」 「喧嘩したいの?お父さんのこと嫌い?」 雇ってもらえばいいのに。 他人の下で働くより、絶対楽だと思うのに。
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

584人が本棚に入れています
本棚に追加