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隆太は頑なだ。 嫌いなものを好きになれなんて言われても難しい。 それくらいわかっているけど、私にはいやな親のようには思えない。 隆太が贅沢に思えてしまう。 「でも大学は親に出してもらったでしょ?」 「…年末、俺の実家に連れて帰って紹介してやろうか?」 紹介…。 高校のときとは違って、しかも年末なんて、なんだか嫁候補として紹介されるみたいに思えて、ちょっと恥ずかしくなった。 恥ずかしいけどうれしい。 なんて一人で盛り上がりそうになっていたのに。 「嫌だろ。俺もあまり顔を見たくない。高校の頃、予備校なくても外ぶらついて、家に帰りたくなかった」 いえ、誰もいやとは言ってません。 自己完結しないでもらいたい。 「紹介して?」 「…おまえより俺のほうが薄情だと思う。もしも千香と結婚することになっても、親に紹介する気がない」 「紹介してやろうかって言ったの、隆太のくせにっ」 「父親の顔を見ると、どうしても殴りたくなる衝動が…」 「変な言い訳しないっ」 「んじゃ、この話題やめよう」 隆太はディスプレイの中のものを消して、音楽ライブラリを開いて、いきなりクリスマスっぽい、しかもムードのあるような曲をかける。 「思いきり親に背中向けて逃げてるように見える。いなくなったり、修復しようがないくらい壊れたら、逃げることもできなくなるよ?」 「…説教いらない。せっかくのクリスマスで、初めて俺の家にきてくれたんだろ?」 しよ?と言わんばかりに、後ろから隆太の腕が体に回って、その唇が耳の後ろに近づく。 「初めて隆太の実家もいきたい。初めて隆太の親にも会ってみたい」 「……そのうち。司法試験受かったら」 「司法試験受からないって思ってるから言うの?目標にならない。私になにかさせて、それができたら会わせてあげるって言ってよ」 「……千香、あんまり自分のこと話さないから、何を目標にさせればいいのか…。ドラムでミュージシャンとセッションするとか?」 「3年以上ドラムさわってないけど、それくらいならやってあげる」 「…簡単に受け入れるってことはミュージシャンの知り合いいそうだな」 「いるかわからないけど、昔の音楽関係の知り合い全部当たれば、どこかで繋がるはず」 「…やっぱやめた。男と再会させることになりそう」 再会することになるだろうけど。 目標を置いてくれれば、隆太を動かしやすいって思うのに。
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