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私は隆太の気持ちを理解しきってはあげられない。 その家庭で育ってもいないし、身の回りに芸能活動している人もいない。 自分の親よりましなように思えるけど、隆太にとっては家を出たくなる親。 ……お父さんに会いにいけば?なんて私が言われたとして、いきたくないと思うのと同じかもしれない。 生活費の面倒見てもらっているでしょと言われても、あっちはそれで片付けてるだけなんだと私は思う。 会いにいって迷惑顔を見せられたら傷つくのは私だ。 だけど…、わからなくても、隆太は違う。 恵まれているって私は思う。 そういうふうに考え方をかえてもらいたいようにも思う。 後悔しないように…顔だけネットで見るんじゃなくて。 「じゃあ、ドラムだけで路上でいくら稼げたら会わせてくれるっていうのはどう?」 「…無謀すぎ。パーカッションならわからなくもないけど」 「じゃあ、パーカッションやる。楽器ないから、そのへんのもの叩いてリズムとって演奏。…楽しそうかも」 自分で言ってみて、なんとなくいいなぁと思ってきた。 やってみたい。 打楽器好きだった。 カスタネットも鈴もタンバリンも好き。 ドラム教えてもらって、いろいろ叩かせてもらったし、今ならもっとリズムつけられそう。 「んじゃ、千香の仕事が休みに入る29、30の2日で1万。…まず無理だろうけど」 「だったら31日までの3日にしてよ」 「年末、実家いくこともないなら、テレビ見ながら一緒に過ごそうって思っていたんだよっ」 「一緒にパーカッションしよ?」 「寒いだろっ。それ、やっぱりやめっ」 「取り消してばっかり。ミュージシャンと演奏か3日間パーカッションのどっちかにして」 「……本気?」 「本気」 強く言い切ってやると、望みが薄いからと思ったのか、パーカッションのほうに渋々と決めてくれた。 望みは確かに薄いけど、そんなの友達にカンパしてと触れ回ればなんとかなる。 隆太が寒いと言うなら、見張りもいないし、自分でお金を出してしまえばいい。 私の目的は一つ。 紹介という名目で隆太の実家に隆太を連れて帰ること。 パーカッションもおもしろそうだから、やってみるけど。
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