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山瀬はどこまでパーカッションするための楽器を聞き回ってくれたのか。
私が一人でやろうとしていた駅前の広場に車で送ってもらってセッティングしている間、ひたすら電話ばかりしていて。
わからないながらも、どこかで聞いたリズムを叩いて、とりあえず遊ぶことから始めていると、合わせろと言わんばかりにギターを隣で弾いてきて、私はそのメロディに合わせるように叩く。
ここはこんな感じと注文つけられて、また叩いてと繰り返していたら、山瀬が呼んだらしい人が集まってきた。
高校の頃のバンドの知り合いや、まったく私は知らない人や。
男ばかりでもなく、女も。
年代もばらばら。
寒いから固まって大規模セッションになって。
なんの打ち合わせもない曲をやって、誰かがはずしたりして。
今度ははずしたものに曲を合わせていって。
完全に即興だった。
悩んでることなんてできない。
悩んでいたら背中を押される。
やらなかったらブーイング。
リズムをはずしても合わせてくれる。
知らない間に楽しくて笑っていた。
とは言っても遊んでばかりもいられない。
隆太に納得させるために、私が一人で叩いているところに一緒にやってた人にお金を入れてもらうムービー撮ったり。
やらせだけど。
本当にお金を入れてくれる通りすがりの人もいた。
そんな楽しい連休1日目を過ごしていたら、隆太から連絡があって。
くることになって。
大勢でセッションやっていることがバレてしまった。
「千香?」
怒りそうな声音で名前を呼ばないでもらいたい。
「女の子だけならいいっ?」
「じゃなくて…」
成功させるなと隆太は思っている。
それはよくわかっているけど。
姑息な手段を使ってでも、私には私の目的がある。
女の子だけのパーカッションセッションも楽しそうと何も知らない人たちは盛り上がって、隆太の中止という言葉を奪った。
隆太の視線を気にしながら、即興セッションしていたけど。
そのうち隆太が妥協したように笑ってくれた。
たくさんの人の協力もあって、隆太が決めた1万という額も1日で稼げた。
ほとんどが一緒にセッションしてくれた人たちのカンパだけど。
私にはいい友達がいる。
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