Shallow thought

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バイトの帰り道、私は携帯を手に、今日こそは晃佑に電話をかけてやると思って。 ……かけていない。 もう晃佑から電話してくれればいいのにとか思って。 晃佑は私のことはもういいから電話もしてくれないのだろうと思って沈み込む。 勝手な妄想が先走るのは私の悪い癖なのかもしれない。 聞いてみないと晃佑の気持ちなんてわかるはずもないのに。 …言われたことをそのまま真に受けるのも嫌だったりする。 私が軽く嘘をつけるから、嘘かどうか疑う。 …私の性格が問題のような気がしてきた。 相変わらずぐだぐだ。 携帯に晃佑の電話番号を表示させて、それを眺めながらのいつもの帰り道。 「チカちゃん」 声をかけられた気がして顔をあげた。 その名前に反応してしまうのも私の癖になっているのかもしれない。 私の名前はチカだったかもしれない。 顔を上げたそこに立っていたのはトモだった。 晃佑の女友達。 晃佑と手を繋いで晃佑の家にいった子。 まだ覚えてる。 忘れていない。 「どこいくの?遊ばない?」 トモは何を考えているのか、私に笑顔を見せてそんなふうに言ってきた。 何かが腑に落ちない。 納得できない。 トモは晃佑が好きだったはずだ。 晃佑のそばに私がいると、いつも私を睨んできていた。 なのに笑ってる? 別れたから? ……別れても、とてもフレンドリーに接することのなさそうな相手だと思う。 「…私、あなたと友達にはなれないと思うんですけど」 「なんで?もうコウと別れてるんでしょ?コウを狙ってるわけでもないでしょ?」 「狙っています」 私はごまかすこともなく答えた。 トモは私にきつい視線を投げかける。 「コウを振ったくせになに言ってんの?あんた、健忘症?病院いったら?」 私はこういう子とはとても仲良くなれないと思う。 「病院いってきます」 私はそうトモに答えて、家に向かって歩く。 友達じゃないし、友達にはなれない。 見た目で判断しているわけじゃない。 その考え方に同意できないというか、ついていけないというか。 …晃佑はトモと仲良くできているし、トモの考え方に同意したりもするのかもしれない。 やり直すことができても、また言われるのかも。 仲良くしてやれって。 仲良くなれそうなタイプくらいはわかってる。 仲良くなれないタイプもわかってる。
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