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お坊ちゃん、親や家に対してはわがままだと私は見る。
隆太は2階へとまっすぐ向かおうとして。
「隆太さん、リビングはあちらですよ。…紹介するんでしょ?」
なんてお手伝いさんに止められて冷やかされて。
私は隆太の背中を軽く押して、その足を進ませる。
溜め息を一つついて、隆太は覚悟を決めたかのようにリビングへ。
私は緊張するより、どこかわくわくして、お手伝いさんが向けてくれる笑顔に笑顔を返す。
隆太がリビングの扉を開けると、今か今かと待っていたような美人のお母さんが隆太に飛びついた。
「お帰りなさい、隆太」
なんて溺愛されている。
隆太は思いきり嫌がって突き放す。
溺愛されるのがいやだなんて、かなり贅沢だと言ってやりたい。
「あら、隆太の彼女、かわいいじゃない。あなたが隆太をここに引っ張ってきてくれたのよね?ありがとう」
なんて、お母さんは私にもハグをくれた。
ちょっと恥ずかしい。
そしてバレまくってる。
それだけ隆太は寄りつかなかったということだろう。
「早く紹介しろ」
なんていう声に気がつくと、ソファに座ったままの隆太のお父さん。
テレビで見るより若くて男前。
思わずときめいてしまったのは隆太には言えない。
隆太ももっと年齢を重ねたらああなるのかなと思うと、早く老けて欲しいように思う。
「…目立ちたがりの父と八方美人の母、俺が小学、中学のときの家庭教師、現在居座って給料貰い続けるお手伝いさん」
隆太は私にその家族を紹介してくれて、その一言余計なものにどうしていいか私のほうが困る。
「相変わらず親を舐めまくってくれてるじゃない。で?彼女の紹介は?」
お母さんは今にも隆太を蹴り飛ばしそうな顔で見て聞く。
「…俺を振り続けてくれたくせに、俺を落としにかかった若林千香さん。ついでにそれに落とされた俺」
隆太がそう紹介したりするから私は立場がなくて、隆太のお父さんとお母さん、お手伝いさんも笑った。
笑いをとるためにしてきたことでもないのに…。
「いい気味だわ。千香ちゃん、もっと振り回してやってね。このクソ生意気で親を馬鹿にしまくりのドラ息子」
お母さんはにっこり笑顔で私に言ってくれる。
口喧嘩…こわい。
でも隆太がそう言われても仕方のない態度だと思う。
仲がいいのか悪いのか。
謎。
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