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レストランを予約してくれているらしく、その時間まではかなり微妙な空気でのお茶会。 空気を濁したのは隆太で、更に濁しているのも隆太だと私は思う。 お母さんはひたすら私に質問責め。 かなり興味があってくれているのはわかるけど、笑顔でいるだけではかわせそうにない。 隆太との馴れ初め、次に振ったとき、その次、更にその次。 私の分がかなり悪い。 「3回フラれたらいい加減諦めてくれればいいのに、しつこい男だったのね」 お母さんは私を悪く言うではなく、そんなふうに隆太をけなす。 私を悪く言って隆太をかばってくれたほうがいいなと思ったりする。 家族の間のひび割れは思ったよりあるのかもしれない。 それでも…、隆太が何も言わずにテレビばかり見ていても、私という他人の前だからなんていう姿もなく、お母さんは隆太の背中に怒ったような顔を見せて、私には笑顔をくれる。 なんとなく家族だと思う。 私は他人だからお母さんは気を遣ってくれている気がするけど、隆太に気を遣ったものはないというか。 それでも邪険に扱うようなこともなく、それぞれのテリトリーを守っているというか。 こんなのでも仲はいいのだろう。 会わないことすべてが悪いわけでもないのだろう。 たまに顔を見せるくらいしてもいいんじゃない?とくらいしか、隆太に言えるものはない。 嫌っていても、尊敬をしていなくても。 壊れて修復できないような家族じゃないと思う。 自分の家のことを考えて、お母さんのことを考えて、家族というものを考えて。 やっぱり隆太をうらやんだ。 食事を済ませたあと、また家に戻って、お父さんが隆太を引き留めるように晩酌。 隆太は車だからと飲もうとせずに、何度もそろそろ帰ると言って、引き留められてを繰り返して、結局、年明けを隆太の家で迎えた。 もう遅いからと逃げるように隆太は家を出ようとして、私も慌ててついていく。 「隆太いなくてもまたきてね、千香ちゃん」 「式の日取りくらいは教えなさい」 なんていうご両親の声に送り出されて、更にお見送りされて。 家から離れて、コンビニの駐車場に車を停めると、隆太はぐったりとした様子を見せた。 …疲れるのはわかる。 でもなんだかんだいって、結局は溺愛されているだけ。 嫌っても嫌っても、嫌ってくれないいい両親だと思う。 私はあんな家に生まれたかったかもしれない。 そんなものも含めて隆太が好きなのだろう。
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