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「…今、本気で嫌になった」
なんて隆太は言ってくれる。
けっこう簡単に言ってくれるものだ。
ちょっとムカついたもの見せただけなのに。
続けていきたい…なんて思っても、こんなことで簡単に終わることもできるのだろう。
私が何も言えなくなると、隆太は私から離れてハンドルを握る。
逸らされた顔を見ていた。
拗ねてる。
私も拗ねてしまいそう。
些細なことなのに、謝る言葉を持てない。
仕事でいつも謝っているくせに、謝る言葉を持てない。
隆太も…勝手な言葉を口にしてる。
それはきっと私への甘えだろう。
何も言ってくれないから更に何も言えなくなって、隆太の視線もこっちを見てくれないし、この車の中の空気が嫌になる。
貰ったお年玉をダッシュボードに入れて、車を降りた。
喧嘩なんてしたくないのに…、言い過ぎた。ごめんの一言も言えなくなった私も悪い。
コンビニの駐車場。
コンビニに寄って、飲み物を買って、灰皿の近くで煙草に火をつけて、溜め息のように煙を吐き出す。
深夜ではあるけど、これから初詣でもいくのか、騒がしいグループや親子連れなんていう客もいる。
ポケットで携帯が震えて、何かと思って見てみると、あけおめメール。
車で移動だったから少し薄着で軽く震えながらメールを見ていた。
今は回線混雑でメールは遅延して電話はお掛け直しくださいだろう。
電車もないだろうし、タクシーで帰ろうと思っても通話ができない。
もう一本煙草に口をつけて、買った飲み物飲んで、ぼんやりしていたら、酔っ払いに声をかけられた。
あけおめから始まって、何してるの?カラオケでもいかない?とナンパだ。
煙草を消して、飲み物飲みながら、とりあえず家に向かって歩く。
あまり履き慣れていないヒールで、足が痛いかもしれない。
私はわがままで隆太もわがまま。
お互いに自己中で、私が隆太を折れさせて続く関係。
私が折れて自分を閉じ込めても終わる。
つまり、問題は私のほう。
私は愛し方も愛され方もうまくない。
恋愛に不向きというものなんだろう。
溜め息をついて、こんな自分をどうにか変えたいと思ってみても、変えられているなら、こんなに多くの恋愛はしてきていない。
手を離されたら終わる。
後ろから走る足音が聞こえて、私の腕を掴む手を感じて。
振り返ると息切れした隆太がいた。
…あなたが私を手放したら終わる。
強がったものが涙になってこぼれた。
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