Catch you up

14/20

584人が本棚に入れています
本棚に追加
/606ページ
「…ごめん。ちゃんと送るから帰ろう?」 隆太が謝ってくれたりするから、また自分が嫌になって泣けた。 「嫌になったなら…、手を離してくれていいの。私しか隆太につきあえないわけじゃない。我慢して、妥協してるのは隆太でしょ? …もしも私とのつきあいに、ただ楽しいだけの遊びを求めているのなら、私はそんなふうになれない。また隆太にとって嫌なことを口にするかもしれない。 私はわがままだし、隆太のことが好きでも、隆太の理想にはなれそうにない」 だから……。 言おうと思っても、思い通りに自分を操れない。 それでも好きなのって言いたくなる。 言ってあげるべき言葉は…、だから……私の手を離していい。 他に隆太に似合う女の子ならいくらでもいるだろうから。 隆太を好きになる女の子なんていくらでもいるだろうから。 私に合わせろなんて言わない。 今までの仕返しのように私を置き去りに消えてしまっていい。 ……言えないの。 心の中、ずっと私を思ってくれている人でいてほしいと、わがままに願うから。 フラれたくないと願うから。 だけど…、それでも…、隆太のことを本当に考えるなら、私とつきあっていても楽しくもないだろうから。 隆太がくれる決断を受け止めなきゃいけない。 「……家、送る…から」 私は隆太の言葉に頭を横に振った。 きっかけは些細なこと。 嫌になった…と言われたこと。 本気で嫌になったんでしょ? 追いかけてくれなくていいの。 隆太に追いかけてもらえるような女じゃない。 自分のことくらい、よくわかってるよ。 外見しか取り柄ないのかもね、私。 ぽたぽたと足元に黒く染みを残すものを見ていた。 「……この手を離したら…後悔する。きっと」 「…大丈夫。新しい彼女、隆太ならすぐにできるから。初恋みたいなものに、お互い縛られてしまってるだけ」 「……千香」 「大丈夫。……行くなら早く行って」 私の腕を掴んでいた隆太の手が離れた。 見えていた足が歩き出す。 顔をあげると背中が見えた。 遊びなら…、友達という気持ちで終われたなら…よかったのに。 涙、止められなかった。 体、ふらついて、壁に寄りかかってしゃがみこんだ。 新年からなにやってるんだろ?私。 そんな新しい1年の始まり。
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

584人が本棚に入れています
本棚に追加