Ceaseless happiness and sadness

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隆太は住んでいた家を引き払って、私の部屋に転がり込んできた。 駐車場も近隣で借りて確保。 隆太の荷物が広々とした部屋に運び込まれると、あんなに広くて何もないとも言える部屋だったのに、ちゃんとした部屋になった。 隆太のソファーベッドをソファーにしても、2つもいらない。 収納の段ボールをそのまま入れていた部分に本棚つくられても…。 しかもそこを隆太のクローゼットにかえる? なんて微妙に部屋を改造されてしまう不満もある。 あるけど、隆太の好きにしてもらったら整頓上手。 大きなものはソファーベッドと机とパソコンくらいで、綺麗に片付けられた。 逆に散らかしたら怒られそうでこわい。 『あっちの壁に棚置いて、千香の鏡台もつくったらいいんじゃないか?化粧品多すぎ』 使わなくても集めてしまうこともある。 なんていうことは面倒だから書かないで、 『もう隆太の好きにして』 と投げやりにしたら、後日本当に棚をつくって、細々とした私の化粧品や整髪料なんかのスプレーを置く場所をつくってくれた。 全身写す鏡も嵌め込まれたようにぴったりと棚に合わせられている。 鏡台として使えるから洗面台もすっきりした。 不満もあったのに満足。 この鏡台、かなりいい。 『気に入った?』 ホワイトボードに書いて隆太は聞いて、私がうんうん頷くとうれしそうに笑う。 『DIYが趣味?』 ホワイトボードに書いて聞いてみると、隆太はホワイトボードを消して書いていってくれる。 綺麗な字で隆太の文字は読みやすい。 『コウのじいちゃんが大工やっていて小さい頃に教えてもらって好きになった。コウより俺のほうが才能あるってじいちゃんに誉めてもらった』 隆太はうれしそうに教えてくれる。 隆太の好きなもの、初めて聞くように思う。 洋楽は隆太がよく聴いていた。 同じ煙草ばかり吸うから好きな煙草もわかる。 知っていることもあるけど、知らないこともまだある。 『弁護士より大工になりたい?』 そこを聞くと、隆太は迷うこともなく、 『DIYは趣味』 そう書いた。 聞きたいこと、たくさんあるのに書くのが大変。 隆太に聞きたいことを書いていたら、隆太は慌てたように立ち上がってキッチンへいく。 鍋が吹き零れていたみたい。 普通に元気なのに、この耳はまだ治らない。
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