Ceaseless happiness and sadness

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隆太しかかまってくれる人はいなかったのに、スギが本当に頻繁にくるようになって、病院もスギが付き添ってくれることもある。 隆太は車で送り迎えしてくれるけど、スギと病院へいくときは電車を使う。 私を置いていったりはしないけど、そこまで過保護にもしてくれない。 私が一人で大丈夫なことは手を貸さない。 筆談はあまりしないで、唇の動きで言ってることをわからせようとする。 なかなか厳しい先生だ。 でも嫌じゃない。 『今まで私が千香に頼ってばかりだったから、少しでも千香に頼りにされたい』 なんて言ってくれる。 そんなことないよ。 私もスギにいろいろ話を聞いてもらったこともある。 なんて話したいけど、上手く声に出せない気がして。 「ありがとう」 それだけはちゃんと自分の声で言えるようにがんばって言ってみた。 スギは聞こえたみたいで笑顔で頷いてくれる。 『千香ががんばるなら、私もがんばる。千香の恋バナ、話せるようになったらいっぱい聞かせて。うんざりするくらいのろけてくれてもいいよ』 いや、私は自分の恋愛、語ったりしない。 隆太とのことだって、はっきりいって話したくない。 かっこいいものでも、自慢できるようなものでもない。 それでものろけるのなら、隆太がずっと私を忘れない…とでもいうか。 会えたら必ずといっていいほど、隆太が追いかけてきていたと思う。 そして私は…逃げるくせに待ってしまう。 かっこ悪い。 スギよりも優柔不断。 そうなるのは、素直じゃない言葉で、素直じゃない気持ちで逃げるからだろう。 追ってくれるから、今の私がいる。 …愛されてる。きっと。ずっと。 隆太が休みの日、少し暖かくもなってきたし、借りパクのようになっているボンゴを叩きに連れ出してもらった。 部屋ではさすがに近所迷惑になりそうでできない。 ミクがうるさいと乗り込んできそうだ。 音はわからなくても、自分の手がつくるリズムはわかる。 隆太が手を出してくるから貸してあげてみた。 私の真似をしようとしているのはわかるけど、リズムがばらばらになっていて笑えた。 『リズム感ないし音痴だったりする?』 文字で聞いてあげるとヘッドロックをかけられて笑う。 そんなことをしていると、以前に一緒にセッションしてくれた人が寄ってきて。 たぶん久しぶりとか、またやろって言われているけど、正確なことはわからない。
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