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桜が咲き始める頃。
いつものように隆太の腕を枕に眠っていた。
でも朝、先に起きるのはいつも隆太。
「千香、朝だぞ。起きろ」
なんて隆太の声が聞こえる。
体を揺らす手。
もうちょっと…なんて思って、それを口にしたのか呻いたのかはわからない。
「ちーか、おーきーろ」
って抱き起こされて、ベッドの上、隆太を背もたれにうつらうつら。
「起きないとキスするぞ。ん…」
なんて、私の唇にふれる隆太の唇。
ん…。
歯みがき粉のにおいがする。
隆太の体に腕を回して、膝の上に乗りながら、微睡んだ中でひたすらキス。
気持ちいい。
ぎゅうって抱きしめてくれるから更に気持ちいい。
私の鼓動、とくんとくんって頭のてっぺんまで響く。
唇、ゆっくり離すと吐息がこぼれて、隆太の頬に頬を押し当てるようにべーったりくっついて。
「愛してる」
微睡んだ中で、隆太がいつも言ってくれる言葉をその耳元に囁く。
ぎゅうってくっつきまくってるうちに、頭も目覚めてきた。
コーヒーとバタートーストのいいにおいが鼻先に感じる。
お腹がきゅうって返事した。
「おはよ、隆太」
ちゅっと頬にキスをして立ち上がって、冷めてしまわないうちに、隆太が用意してくれた朝ごはんを食べに歩く。
んーっと大きく伸びをして、机の上の朝ごはんによだれが出そう。
椅子に座って、ふーふーとコーヒーに息を吹きかけて、一口飲んで。
トーストをかじるとさくっと音がする。
おいしい。
ハムと目玉焼きとサラダ。
ぱくぱく食べていると、隆太の席のようになった私の前の席に隆太が座る。
じーっと私を見てる。
「なに?おいしいよ、朝ごはん。冷めないうちに食べなさいって隆太、いつも言ってるよね?食べないの?」
「……おはよ」
「おはよ」
何回挨拶するんだろうって思いながら、もう一回言ってみる。
隆太は立ち上がって、机の上のものこかしてしまいそうな勢いで、私の頬に耳にその手を当てる。
なんか驚いた顔をしてる。
ゆっくり朝ごはん食べたいのに。
「……もう一回。聞こえる?俺の声。なんか歌ってみて」
「……それでそしてキスして抱きしめて愛してるって言って。もっとぎゅっと強く抱いて胸が苦しくなるほどに。あなたの背中に腕回し顔胸に埋めて。この恋を心に焼きつけたい」
歌詞、まちがってるかもしれないけど歌ってあげた。
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