Ceaseless happiness and sadness

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今してって意味じゃないのに、机の上の食器の音を立てて隆太は机を乗り越えそうな勢いで私の頭を抱きしめようとしてきて。 私は何がなんだかわからないながらも、片手にコーヒー、片手にトーストで立ち上がって、抱きしめられてあげる。 頭に顔を擦りつけられて、本当によくわからない。 額にふれた隆太の目元に濡れた雫を感じた。 両頬に隆太の手。 額に額を当てた至近距離から私の目を見て、少し目の端に涙を浮かせてうれしそうに笑う。 なんかかわいい笑顔に、見慣れた隆太の顔なのに、どきっとした。 「千香、愛してる」 そんな顔でそんな言葉、気持ちいっぱい込めて言わないで欲しい。 すごく恥ずかしくなる。 視線を挙動不審に泳がせてしまう。 目を閉じてもうれしそうな隆太の唇。 今日は病院の日じゃないのに、私の担当医に隆太は連絡をとって、午前に時間があることを聞くと、病院に連れていかれた。 医者に普通に挨拶すると、医者も驚いたような顔を見せたかと思うと笑った。 そう。私、小さい頃から音が聞こえなかったわけじゃない。 聞こえるのが当たり前だった。 だから、聞こえるようになったことをなんとも思わずにいた。 私の難聴は朝起きたら治っていた。 家に帰る車の中、隆太は私が聞きたいって言ったリアーナのアンブレラをかけてくれる。 思ったよりリズムのある歌だった。 もっとバラードっぽいものかと思った。 えら、えら、えら、え、え、え…って歌詞が耳に残る。 …好きかも。 「歌って?」 言ってみると、隆太は綺麗な英語の発音で歌ってくれた。 知らなかったけど、英語きっとペラペラ喋れそう。 隆太の歌声は聞きやすい音。 音痴じゃなかったのが残念にも思う。 ずっと聞いていたいのに曲が終わって、私はもう一回同じ曲をかける。 「何回歌わせるんだよ?それより千香、お父さんとお姉さんに連絡しないと。トモちゃんとコウには俺から連絡する。あと、職場、休職だったよな?戻れるかどうか聞いてみたら?」 しなきゃいけないとは思うけど。 今はもう少し隆太の歌を聞いていたいのに。 隆太のペースに不満。 きっとこれからも不満って思うこと、たくさんあるだろうなと思う。 同じものじゃないから。 隆太は私じゃないから。 でも、だからこそ、その体温を声を心を愛しくも思えるのだろう。
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