Ceaseless happiness and sadness

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当てようとしているのに避けて当たらない。 当たらないから蹴りあいは意地になったように続く。 きっとこの二人の関係、小さい頃からこんなのだったんだろうと思う。 たぶん親友とは言い難い。 仲悪くなるくせに、謝罪もなく気がつくと仲直りしている。 なんか家族みたいなつきあいだなと思う。 ちなみにこの蹴りあいの原因は誰にも言わなかった私にあると思うのに、私は蚊帳の外に置かれる。 煙草一服して待ってると、飽きたのか疲れたのかやめた。 決着はつかなくてもいいみたいだ。 「時間の無駄。千香、いこ?」 隆太が声をかけてきて、私は立ち上がる。 「紫苑もいく?」 「隆太がいなかったらな。また今度」 紫苑は軽く笑って、手を振って歩いていって、その背中をしばらく見ていた。 隆太に手を握られて歩き出してから、ありがとうを言うのを忘れていたと思い出す。 隣の芝生は青い…と思う。 こっちの芝生も負けずに青いと思うけど。 隆太の横顔を見て、道路に落ちたピンク色の花びらを見る。 初めて隆太と話したのは春だった。 あの公園の桜は今も咲いているだろうか。 高校生だった私。 今の私は少しは大人になれただろうか。 「…また…別れるようなことがあっても、千香が本当に苦しい時は…。頼りないかもしれないけど、俺を頼って欲しい」 なんて隆太は口にして、私は隆太の横顔を見上げる。 「隆太も私を頼ってくれるの?」 「……重荷じゃなければ」 「じゃあ頼る。でも…、お正月みたいな別れ方したときは頼れない。重荷に思われたと思うから」 「ごめん。親と蹴りあいでもしたら疲れることもないんだけど、さすがにそれできないし…。かなり自分勝手だったって反省してる。 あ。千香がもらったお年玉、どうする?」 「いくら入ってるの?」 「…おまえもらいすぎってくらい入っていた。俺ももらったことない額」 聞くのが恐ろしい。 結婚の前祝い金をもらったのかもしれない。 というか、こんなお坊ちゃんを本当に私が捕まえていても大丈夫なのだろうか? 自慢じゃないけど、お父さんはお金持ちというわけでもない。 「うちの親がおかしいんだよな」 何も言わなかったら、隆太はまた親をけなし始める。 けなしあい家族。 それでも…、それも幸せの形なのかもしれない。
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