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それは俺にとっての初恋。
初めて目にとまったのは、高校1年。
違うクラスとも合同の体育の授業。
男女別で授業は行われる。
夏前で蒸し暑い。
ジャージから制服に着替える汗臭い人混みの男子更衣室。
さっさと着替えて更衣室から抜け出すと女子が更衣室からはみ出して着替えていた。
興味はあってもあまりじろじろ見て変態扱いもされたくないし、そこもさっさと抜け出して体育館の外へ出ようとした。
目の端に見えた白い細い背中の素肌。
目が奪われるように思わず見てしまった。
と言っても一瞬。
女はもうブラウス着てる。
…もうちょいサービスしてくれればいいのに。
なんて思ってることは、とても口に出して言えない。
背中を俺に見せてしまったことも気がついていない女は、隣の友達らしき女と笑いあってる。
ちょっとかわいい。
明るくて元気がいい感じで、目が大きいほうかもしれない。
隣にいる子もかわいい。
そっちはおとなしそうだけど、笑いあってる明るい顔。
どっちもかわいい。
どこの中学だろ?
クラス何組だろ?
なんて興味を持って、まだ更衣室にいる連れを待ちながら、体育館の外から何気なくちらちら見ていた。
元気がいいほうがやっぱり好きかもしれない。
くるくる変わる表情がかわいい。
夏服の半袖ブラウスからのびた白い細い腕。
さらさらしていそうな髪。
こんな暑いのに汗臭くもなさそうな、そこらの女より美少女という言葉が似合いそうなかわいさ。
いいもの発見した。
「お待たせー。水ーっ」
幼なじみの高校も同じところに進学したコウは体育館から出てくると、体育館脇の水道の蛇口に飛びついていく。
俺の目線の先も見ていない。
あたりは騒がしい生徒の声と夏の蝉の声。
空からは眩しい夏の太陽の陽射し。
真っ黒に日焼けしても、あの子はかわいいかもしれない。
なんて俺の思考は女のまま。
水道の縁に腰をかけて、コウが頭から水を被って満足するのを待つ。
そのうち中学の頃の連れや高校で知り合った連れに囲まれて教室へ戻る。
ふと思い出したように振り返って、あの子を見る。
そこにいるのを見れただけでうれしくなってる。
淡い初恋。
千香は俺の中じゃ決して届かないアイドルみたいなものだった。
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