Baby lover(Ryuta↓all)

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「家、帰らないと怒られる?」 「…まだ親帰ってきていないと思うけど。……なんで引き留めるの?…かまって欲しいの?」 若林はからかうように聞いてくれて。 俺は恥ずかしくも思いながら、若林をまっすぐに見ることもできないまま、気持ちのままに頷いた。 かまってほしい。 もっと話したい。 胸は有り得ないくらいにドキドキしまくってる。 「遊んで?飯、なんか買いにいこうか?」 声をかけながら若林を見ると、若林は少し恥ずかしそうに頷いた。 ナンパ成功。 ただそれだけでも思わずよっしゃあと拳を握りそうなくらいうれしかった。 目の前は緊張してぐるぐるしてる。 顔がにやけて締まりそうにない。 デートみたいに並んで歩いて、ファーストフードでハンバーガー食べて話す。 友達にはなれてる。 話したこともなかったのに。 視線をあげると、いつも見ていたかわいい子はそこにいる。 俺の話に耳を傾けて、その口元がうれしそうに笑う。 それを見て更に俺が喜ぶ。 俺の人生初めてのデート。 なんてことない普通のデートかもしれない。 でも俺にとってはすごくうれしかった時間。 予備校のことなんて、本気でどこかに忘れ去っていた。 頭の中は若林のことばかり。 自転車の後ろに若林を乗せて、夜道をゆっくり走る。 俺の背中のブレザーを掴む小さな若林の手の温度。 少しがたがたした道を走って、聞こえてくる若林の声。 振り返ると若林は俺に笑顔を見せて、俺も恥ずかしくなりながら笑う。 初めてだった。 こんなに楽しくてうれしかったこと。 淡い初恋は千香に声をかけたときから、俺の中で恋愛になった。 家に帰っても熱はさめないまま。 どうしようもないくらいに千香にもっと近づきたくなる。 千香が俺にくれた笑顔を思い出して、一人にやついてしまう。 妄想のまま、夢の中のまま。 千香が俺の隣で笑ってくれる。 妄想よりも夢よりも。 千香の手は俺にふれて、その体温を感じられる。 こんなのコウに話したら馬鹿にされそうな俺の純愛。 だけど俺には何よりも幸せな恋愛。
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