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「なぁなぁ、コウ、ヒロとした?」
「…した。おまえの彼女、俺の元カノ」
「ヒロの喘ぎ、小さくね?そんなもん?俺が下手なだけ?」
「…もしかしたら俺が喘がないようにしたかも。親にバレないように声出すなって言ってたし」
なんていうことも耳に聞こえてくる高校3年。
俺はたぶんこの仲間内で一人、したことがない。
奈緒美みたいに軽く誘ってくる女もいるのに、そういう機会がまったくなかったわけでもないのに。
キスもしたことがない。
理由は簡単。
コウの元カノだから。
奈緒美は俺の彼女のように、俺の腕に腕を絡ませたり、俺に後ろから抱きついてきたり、積極的ではあるけれど。
「ベタベタすんな、こら」
俺は奈緒美の腕から逃げる。
逃げてもまた捕まってる。
奈緒美の頭を軽く叩いて撫でて。
頬をつねって。
そんなことしても奈緒美は俺がかまっていると喜んでしまう。
虐めてやってるのに、ぎゃあぎゃあ言いながら、俺にべったり。
「嫌じゃないくせに」
なんてからかわれる。
嫌だ。
千香に見られる。
俺の目は千香の姿を探して、千香は教室の中の片隅、杉浦といつものように話してる。
……あれに近づきたい。
そう思っただけでも、俺の純情、ドキドキしまくってくれる。
そんな俺にどすっと後ろからのしかかる女の体。
また奈緒美かと振り返ると別の女。
頬をつねると笑って嫌がって、俺がかまうことに喜ぶ。
…つまり、俺がこういう反応を見せるから、からかわれている。
コウは女にのしかかられてもこんな反応しない。
女の腕を掴んで更に抱きつかせたり、背負って持ち運んだり。
俺やコウはこういう反応ではあるけど、他の男にやると調子にのってくるとかで女が嫌がる。
「隆太、今日の放課後、遊びにいこ?」
「…予備校。また今度」
なんて答えつつ。
放課後には千香と待ち合わせた公園にいく。
千香は俺より先に公園にきていた。
俺はうれしくてにやけそうになりながら、とりあえず友達を始めていく。
微かにふれた肩にさえドキドキする。
女に抱きつかれまくっていても、千香はまた違う。
特別。
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